第19話 新たなる危機
「やらかした……」
『死ねや雑魚がぁああ!』
思い返すたび苦しくなる自分の本性――幸いなことに
それでも、外に出てケニスやフランの顔を見たくはない。
「――
「……
そして、メンテ用の主電源のケーブルを誤って
「……やっぱ乗るんじゃなかった」
確か乗らなかったら……ボランティアであった事を思い出す。
「なんでうまくできない……」
ガタガタと
「……あの……どうかしましたか?」
メンテナンスだと言うのに中に居座るラスターに、不安そうに声がかかる。
「いえ、申し訳ない」
メンテ中の
学術科からのお手伝いであるラスターは三回目の
邪魔にならないように
「お
「……はい」
近くにやってきたカンラギ副会長の労いに、疲れ切ったラスターは適当に返事をする。
気のせいかしら? カンラギ副会長がポツリとこぼし、ラスターが見上げていく。
「何か言いました?」
「ううん、何にも」
「……なにが気のせいなんです?」
カンラギ副会長の様子をじっと見ながら質問するが、素知らぬ顔のまま首を
「気のせいって?」
なんとなく胸をざわつかせるものを感じたが、気にするのをやめておく。
「それよりも休む?」
「えっ?」
「気付いていないかもしれないけど……しんどそうよ」
カンラギ副会長の心配にラスターは
しんどいと言えばしんどい。しかし、休む必要があるかと言われたら別にない。
保健室のベッドにも限りがあり、ただ気分が悪いだけで
そこまでは理性として分かっていても、休みたいと言う想いを全て断ち切れるわけでもない。
「
「……ありがとうございます」
どうしても気分が悪くなれば使おうと、書いてもらうのを静かに待っていると、けたたましい音を立ててドアが開く。
「カンラギ副会長!」
パイロットの休憩所に飛び込んできた男が、キンキン声でカンラギを呼ぶ。
「なんのようかしら?」
「こちらにいましたか! 至急、会議室に!」
「何かあったの?」
「それは――」
口を開いた男は視線を
まさに何かあったのだろう。
「分かったわ。すぐ行く!」
理解して返事をすると同時に、カンラギ副会長はラスターの方へくるりと
「休養届けを書きながら行くから、君も付いてきなさい」
「いや、別に……」
そこまでしてもらう必要のないラスターは
「私の親切を断る気?」
「……了解しました」
そんな不快そうな面で言わなくても……
「えぇ……おいで」
ほんの少し、
ついてくるラスターと、カンラギ副会長の二人の間を、呼びに来た男は視線を行ったり来たりさせながら、何か言いたげに口を開き、閉じるを
休養届けを歩きながら書くカンラギ副会長の後ろを付いていくと、会議室前へと
「あの……」
おずおずと言った様子で、呼びに来た男はカンラギに声をかける。
さすがに、部外者をこれより先に連れていくわけにはいかず、そして、カンラギ副会長としても連れていく気はない。
「できた!
休養届けを
「……なにがあったんだ?」
気にするべきか、気にせざるべきか……
どうすべきか
「
もたらされた情報にカンラギは声を張り上げる。
「
「落ち着けよ。カンラギ」
第二生徒会副会長――ガレス=レイダーが
ここに居るのは六人。
報告班の一人であり、カンラギに来るように言った男。
そして、第一生徒会の会長並びに副会長、
「どうして、今までわからなかったんだ?」
「戦艦級にしては小型なんですが、これまで一度も光速航行をしていないのだと思われます。そのため座標も
報告班がつらそうな様子で報告する。
ワームビーストの大きさはまちまちだが、
その中でも、全長が200Mを
現在では、戦艦級が光速航行をおこなった段階で速やかに発見し、航行位置の予測、警告、退治または救助、といった事までやれるシステムが完成されている。
すべての被害を防いでいるわけではないが、無対策の
「一応、
一度でも光速航行を行った戦艦級であれば、観測と予測演算によって、かなり高い推移で居場所の特定は可能としてる。
しかし、今回は一度も光速航行がおこなわれていない個体で、どこかで成長してからここまでふらふらとやって来たようであった。
「よく……見つけてくれた」
シズハラが感情を押し殺すように、謝辞を述べる。
誰も悪くない。だがそれでも受け入れ難い現実の
「どうしてわかったんだ?」
「いえ……ワームビーストの数があまり減ってないと調べたところ、何体か
「逃げる? あぁ、だからわかったわけか」
「そういうことです……」
ヒヤマ会長の質問に報告班が報告を行い、ガレス副会長が意味を察する。
ワームビーストは基本的に群れて動く。
一体のリーダー格と、その部下といった様子であるが、今回の群れは、多数の群れが集まってできたものであった。
一番大きくても大型級になんとか達したレベルの個体。それが数体しかいない群れではトップがいないのも同義。
そして、その手の群れのワームビースト達はあまり逃げないことが無いはずであった。
トップなんてものがまともに存在しないから、一番でかいのを
それでも逃げたのは、ただ
今回のような有象無象の集まりは五百体であったが、戦艦級といったワームビーストの群れの数は千や万の
そして、今回の戦艦級は――千五百体。
戦いが始まれば、何体増えるかも予想がつかない中、学生達だけの場所で相手にできる量ではなかった。
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