第6話 真相の行方
「
「お前には関係ない」
ラスターは話が進まないシズハラを視界から外すと、同じ質問をナルギにする。
「えーっと、その……」
「昨日はすまなかったな!」
謝罪にしては高圧的な物言いながら、あっさりとシズハラが謝り始めた。
「我々の
なんで不手際を出した相手がこんなにも
「ほんとか?」
「えっ!? あっ……ちょっと待って」
ラスターがミレアに聞くと、シズハラの言ったことを調べ始める。
「演習
「そうか……では、別の質問をするが、なんで
説明した通りの理由以外で、
「そこのミレア=フォードに対して、四番隊に所属するアシタカ=ハロードが声
「それマジで言ってんのか?」
ラスターが
それを元に不祥事を告発するという……それはそれでどうなの? と言われる事であるが、武術科生命を断ち切るという点では同じでも、それでも再起不能までは望んでいない。
「証拠ならある!」
「そうかよ――どこに?」
「
「……というか、その本人どこだよ」
だんだん
「彼は今入院中だ。貴様のせいでな」
「入院してようが、しっかり話は聞けると思うんだがなぁ! それとも
ラスターの態度が、秒を追うごとにガンガン悪くなっていくが、それに呼応して、シズハラの
「彼は入院してからほとんどの時間を
「腕を切っただけで、ずっと寝てるのはおかしいと思わんのか? ……いやおかしくないのか?」
自分で言った後、ラスターは首を
寝ている理由はワームビーストに
腕を切られただけで
しかし、ユリウスが……と考えると話は変わる。一週間ぐらい寝込んでも、そりゃそうだという気はしてしまう。
「めんどくせぇ。俺の言い分はすでに言った。後はそのガタガタとやらが起きた後に判断しろ!」
「アシタカだ!」
「知らねーよ。そんなモブCみたいなやつ覚えてられねーよ。結局何がしたかったんだ? お前」
「……」
ギリギリと歯を食いしばって
「
「……そうなのか?」
「何がおかしい?」
それを聞いたラスターは
「裏付けをする気はあったのか? お前の
「
「自分に都合のいい話以外聞くつもりないの
「会話のできねー奴が人を呼ぶんじゃねーよ。全く時間を無駄にしたぜ……じゃあな」
「な、待て!」
「待ちなさい」
立ち上がり、帰ろうとした足をピクリと止める。
「なんのようです?」
話す価値のない人間から目を切ると、できるだけ平静を装いながら、カンラギ副会長に話しかける。
「今この場で帰るのは感心しないわ。あなたの言うことがいくら正しいとしても――簡単に間違いに変えれるのよ? なんせ証拠をアシタカ君しか持っていないのだから……」
うっすらと
「――ちっ、面倒な」
相手のやりたいこと――では、あの性格上ないだろう。
ただ、やりかねない事としては理解した。
「
「そんなことするわけ――」
「捏造しますって公言するやつなんか、この世にいないんだよ」
寝言を言おうとするシズハラをピシャリと
あの時、確かに周りに人はいたが、わざわざ聞き込みをしてくれるとは思わない。個人でやったところで、
しかも、
どうすれば――
「あの! あたし、見ました。アシタカって人の腕が食べられているところを」
ルーナがアシタカ以外の証人として口を出すが、そもそも仲間内の発言にどれほど価値があるかはあやしい。
その上、タイミングとしても捏造の話に入ってからであり、話を聞かないシズハラが納得するはずもなかった。
「まず、マイクロワームビーストは
シズハラが『はぁ~』と長いため息をつくと、赤子を言いくるめるかのように呆れ混じりに言う。
「そして、お前らが問題を起こした場所では、発見位置がずれ過ぎている。仮にそうだとしたのなら、もう一
「ならなぜ、あれから
「でも……」
「
「発見位置がズレ過ぎているとはどう言うことです?」
ユリウスが落ち着いた様子で、じっとシズハラを見つめながら聞く。
「ふんっ、単純な話さ。ワームビーストはそんなに早く動かん」
「えっ? でもワームビーストって確か光速航行が可能では――」
「それは大量の人間を
ユリウスの疑問はピシャリと切って捨てられた。
「つまり君たちの話は
「それが、お前らの
「何?」
ラスターの質問にシズハラが
「いや……証明してみろと言われると困るんだが、発見位置のズレに矛盾がなきゃ、こっち話を真面目に聞くつもりになるってことでいいんだな」
「そうは言ってない」
「そうね」
シズハラ会長とカンラギ副会長が全く別の意見を出す。
「そもそもお前らの話が
カンラギのことをキッと睨みながらシズハラが
「それがこれまでの
「それはちょっと違うわ。でも、確かに不思議ではあるわね」
「不思議も何も嘘を――」
「お前らは宇宙で戦ってる。だが、今回発見された場所はコロニー内だ」
やれやれとため息をつきながら、口を
「マイクロワームビーストは母胎と共にしか動けない、ワームビーストの動きはそこまで早くない――それは羽根が意味をなさないからだ」
「羽根?」
不思議そうな顔で聞くカンラギに、ラスターはじっくりと
「えぇ……知りません? ワームビーストの起源が何処にあるのか? って言う話を」
ワームビースト――それが最初に確認されたのが地球のロシアだと言われている。
しかし、どのように生まれたのか? 記録には一切なく、すべて不明であった。
宇宙からの
様々な考察があるが、そのうち、後者の理由については体についた羽根が根拠に挙げられる。
宇宙での移動に際し、全く役に立たない羽根を所持しているのは、地球のように空気がある
だが、宇宙からの侵略説が考えられる理由としては、成長したワームビーストが母胎と呼ばれる黄色の球――別名、エネルギーコアを持つことにある。
エネルギーコア内で発生させた生体電流による磁界を利用して、自由自在な移動ができ、
また、人間を捕食することでも、体が大きくなり、コア内に大量のエネルギーが発生することから、宇宙から人間を
エネルギーコアを手に入れることで、消費するエネルギーを補い、また数多くの製品が科学の進歩だけではなく、ワームビーストの
「早い話、羽根があるんですから、空気のあるコロニー内でならマイクロワームビーストは動けるし、普通のワームにおいてもかなり素早く動けますよ? って話ですが」
「なっ……」
もっとも、まったく心当たりのなかったらしいシズハラが
カンラギ副会長も、反応こそ
なまじに詳しく、それでいて宇宙での戦闘経験しかないため、コロニー内でのワームビーストは詳しくなかったようである。
「逆になんで、ナンパの目撃証言まであって、ここまで
「そうね……その証人は本当に信じれるの? ねぇ、シズハラ=テンキさん? 私も気になるわ」
「――証人お前かよ!」
カンラギ副会長に責められるシズハラ会長に、ラスターは
「わ、私は見たぞ――お前らがナンパされているそこの女を守るために話しかけていた所を!」
「その後すぐ暴力沙汰に発展したんですが、お前何やってたんだよ」
「私にも用事があったんだ。そもそもいくら、あやつでも気軽に暴力なんて
「気軽じゃなきゃ振るってわかってんじゃん」
「そんなの――」
「無駄話は、そこまでにしなさい」
話の論点が彼方へと飛び立とうとする前に、カンラギが強引に止める。
「つまり、本当にワームビーストがいたと言いたいわけね」
「そういうことだ。なんなら、腕一本の
ラスターが
「もし仮に、万が一貴様の言うことが本当だったとすると、もう一匹ワームビーストがいることになるんだぞ!」
「だからどうした? そんなことで俺を
……そもそも、2体のワームビーストが同一個体ではないのかとラスターは首を傾げるが、シズハラ怒りに目を
「貴様ァ……、ナルギ、行くぞ!」
「あっ、はい」
「行くな!」
第二の副会長を連れて、行こうとしたシズハラ会長を、カンラギ副会長が呼び止めた。
「話はまだ終わってないわよ」
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