第2話 友からのSOS
コロニーでの公共の移動手段として、一番メジャーである路面電車に
身長は175センチ程で、黒い
友達からのSOS信号――リンゴの仕送りが多く、このままでは
「やぁ」
停留所に着くと同時にかけられる声に、ラスターは
「なんでここに?」
目的地より早い場所で会う友人――ユリウス=シグナを見て不思議そうにする。
「もしかして居るかも? って思っただけ。この電車に居なきゃ行くつもりだったよ」
ひ弱で
そんなユリウスを心配してか、彼の両親は食べきれない量の食べ物を仕送りするのだが、当然のように食べきれるはずもなく腐らしてしまう運命にある食べ物を救うべく、彼らは食事会を――今回はリンゴパーティーと題して集まる運びとなった。
「リンゴ食べる?」
差し出されるリンゴと
「
「いや、ボクは
不服そうなラスターに遠慮して……ではなく、
「リンゴの皮って食べれたよな?」
「一応ちゃんと洗ってはいるよ」
ラスターは果物ナイフを返すと、リンゴを丸
「あいつは、なにしてるんだ?」
齧ろうとして開けた口から言葉が
目的地に向かう道中、ラスターの視線の先には、あんぐりと口を開き、
「おい、待ち合わせ場所忘れたか?」
「あっ! ラスタぁ!」
振り向いた少女が、目を
小学生にも見える女子――ルーナ=クララが赤毛のツインテールを
この場所、中高
中学生や高校生になったばかりの新入生に、毎度の
クラスではすっかり
「これ! これ見に行こっ」
そんな子供っぽい外見道理に、悲しいかな子供っぽい性格は、テレビに映るCMにのめり
「これって……ルーナちゃんが確か
「そうそう!」
素直にCMを
「どう言う神経してたらこんな
次にラスターが目を向けたときには、内容の説明は終わっていたが、
ラスターが白けた目を向けていると公開まで後二週間と続き、よくわからない
「どんな映画なの?」
「リトルナイト! 六
「
リンゴを齧りながらラスターが即答すると、ツインテールをブンブンと振り回しながらルーナは目を三角にしていく。
「ノンフィク……ション?」
ユリウスはまた別の意味で
「そう! 実際にあった話らしいよ……素敵でしょ」
「頭がお花畑の間違いだろ……九割嘘なんじゃねーか?」
うっとりとしたルーナに、ラスターは冷たく言い捨てる。
猫でも駅長を務められる事例があるため、六歳の騎士自体はありえる話だとしても、ノンフィクションだと面白い話に期待ができない。
「むうぅぅぅ、なんでよ! ほんとうに面白いのに!」
興味なさげなラスターに
「ユリウスくんもミレアちゃんとみたいよね?」
「えっ? いや、まぁ……あはは」
挙動
「まぁ見てみたい……かな? そもそもたいして話は知らないし」
「敵に
「よし、聞く気もないから終わりだな」
「むううぅぅ見ようよ! 絶対に面白いのに!」
からかうような口調で口を
「ラスタァも行こうよ! 意地悪ばっか言ってると三人で見にいっちゃうよ!」
「二人でいかせてやれよ」
「……それもそうか」
「おい、君たち?」
しゅーんとなるルーナに、
「まぁ面白いのならいいんじゃない?」
「前に漫画を読まされた時、半分で音をあげた」
「そうか……」
「それは面白いところまで見てないからでしょ! 二人を
「確かに、ルーナちゃんは好きそうだね」
「お子ちゃま向けを高校生に
「えーっと、そもそも
「見たけりゃ、一人で見ろってことだな」
「この意地悪! もう知らない! あたしもリンゴ!」
「えっ? あっはい。どうぞ」
むくれたルーナはフンッと顔を背けながらユリウスにリンゴを要求する。
ユリウスが大
「そんぐらいならしてやるよ」
やれやれとため息をつくと、ラスターは果物ナイフを借りてリンゴを剥くのであった。
目的地につくまでに四分の三が集まった彼らは、目的の場所――RRとEXecuteの後身である初代ReXの二分の一スケールの銅像が立つ場所に着くと、ユリウスは最後の集合メンバーを見つける。
「なにあれ?
白いワンピースに、スラウチハットと呼ばれるつばの広い
「いいじゃないかよ。俺らの仲間がつくったいい店があるんだぜ」
「やめてください!」
激しい拒否で身体をのけぞらせるが、それをあっさりと捌き切り、
「あんた、なにしてんだ!」
「あぁ? 何だお前。彼氏か?」
「……」
「そうだ。そして
勇み足で文句を言いにいきながらも、彼氏か問われて口
「こんなやつが好みか?
「ふざけないでください」
ベタベタと
「ほら、俺たち……もうすぐあれだろ? ちょっとぐらい良い思い出も欲しいんだよ」
「「……」」
「そうか、では今すぐこの場から離れるといい、これ以上不快な思いをしなくて済むぞ」
同情を
「てめぇな、俺達は
「命懸けでワームビーストに立ち向かっている時には、非常に感謝しております……が、現状で敬語を使う価値がないことが、わからないのか?」
本気で不思議そうな表情をしながら問いかけるが、すぐに真面目腐った表情に変えて、話を続ける。
「ですが、ご要望とあらば応じるべきでしょう。ぜひ、回れ右してこの場から立ち去っていただきたく存じます。どうぞ、よろしくお願いします」
頭を上げた先で、男が立ち去っているはずもなく。
「ちゃんと敬語で言えてなければすみません。
煽り以外の何物でもない
「てっめぇ……」
あまりの
「あれ? なんでまだいるんだ?」
とっくに回れ右してるはずの男が、未だ目の前にいることに対して疑問を
相手としては、むしろこれまでよく持った方であろう。
あまりの
「てめぇ、ぶっ殺してやる!」
「武術科に所属する人間が、学術科相手に暴力を振るつもりか?」
ラスターの疑問に返事はない――するはずもない。
我慢の限界に来たナンパ男は、
ラスターはとっさに両
「あんまり
周りを睨んで
「てめぇ、どういうつもりだ?」
「いやよ!」
ある意味当然の拒絶だが、既に相手側の怒りも限界ギリギリ。
「じゃぁ、そこの彼氏くんが許可をくれたら来てくれるか?」
「――っ!?」
許可とやらの取り方は、ラスターへの対応を見ていればわかる。
そしてなにより、もしユリウスが殴られたら、どうなるのかわかったものではない。
「調子に乗るのも、そこまでにしとけよ」
先程殴り飛ばされたラスターが立ち上がると、横暴を
「へ~、まだボコボコにされ足りないってか?」
「まさか、やりすぎってことだよ。武術科の人間が手を出していいと思ってるのか?」
そう言うと、ラスターはポケットからスマートフォンと呼ばれる板状の
「一回目は特別に見逃してやる。次殴ったらお前――退学だぞ?」
「相変わらず、舐めた口をきいてくれるじゃねーか! あぁん!」
一度殴り飛ばした相手はその痛みに
それがナンパ男の人生経験論であるが、いくら睨みつけた所で、ラスターは毛ほどの
「キャンキャンとよく
携帯を突きつけていたラスターは、
どこか空を見つめたラスターは、なにか取り
そんなちんけな虫に向かって、ラスターは引き寄せられるように歩き出し、飛んでいる虫もどこかへ逃げるわけでもなく、ぶんぶん飛び回りながら二人の間をウロウロした後、ミレアの元へ飛んでいく。
「ミレア! 逃げろ!」
ラスターの指示に
「おい、待て!」
もっとも、ナンパ男は一番の目的であるミレアを逃がせるはずもなく、伸ばした手の先にまとわりつく虫に苛立ちを見せた。
「ったく、なんなんだ? これは」
ぶんぶんと
「触るな!」
「痛っ」
言われた所でほいほい聞くわけもなければ、タイミング的に聞けるはずもなく……振り払ったはずの虫が
「ぎゃああああああああ」
右手に走るあまりの痛みに、ナンパ男は
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