第5話『 ≒ (ニアリーイコール)』

『全ての人民を洗脳』!?


鷹音ようおん野華ひろか支配下に』!?


 ふ ざ け る な !


 俺が野華ひろかさんと恋人になった事を『支配』と受け止めるなんて言語道断(怒)


 ……恋心を抱いた相手に『自分を好きになって欲しい』と願うのは当たり前だし、そのために死にものぐるいで努力するのは自然な流れだ。


 だが当然、相手にだって選ぶ権利はある。


 どんなに努力しても、足掻いても、自分を好きになって貰えない時は、悲しく、辛い涙を流してひたすら堪えるしかない。


 ……そして、いつか相思相愛の相手と巡り逢い、その時こそ心からの嬉し涙を流す権利を得るのだ。 


『愛するものの幸せを願う』


 それこそが俺たち人間を人間らしめている『強大マイティ要因ファクター』……『愛』だ。


 それを根底から覆す衛鬼兵団こいつらの思想は、到底容認出来ない!


 俺は怒鳴りつけたい気持ちを抑え込み、極力冷静に……


「作戦参謀……今の貴方あなたの発言は聞き流すわけにはいきません……謝罪を求めます……」


 ……と言った。


 作戦参謀は振り返りもせず


「閣下……自分は、その『貴方あなた』との呼び方も気に食わぬ。 ……せめて『貴官』とか『貴様』とか、軍人らしい呼び方をして頂きたい」と不貞腐ふてくされた声で言った。


 ……こ の 野 郎 💢 あくまでも俺のやり方に逆らうつもりだな!


「判った。 そこに関しては俺も謝る。 だからも前言を謝罪し、撤回して下さい……いや、撤回を求める!」


「ほう……嫌だと言ったら?」……作戦参謀は明後日の方向を向いたまま、冷たい声だけを俺に送った。


 ユイの言によると、兵団ここでの俺の肩書は……


衛鬼えいき兵団総司令部臨時長官 タイラ ハチヒト大将』……だ。

 

 今現在、衛鬼兵団えいきへんだんの指揮権は俺にある。 この権限を利用して、作戦参謀を『反逆者』という名目で断罪し、俺に逆らう者がどのような仕打ちを受けるか見せしめにする事も可能な筈だ!


 ……いや……


 ……しかし、それでは無力な俺が衛鬼兵団えいきへんだんという『虎の威』を借りて、作戦参謀の理解を得られぬまま強制的に排除した事になる。 


 それは恐怖政治そのもの! 俺が最も忌み嫌うものだ。


 ……俺は、成り行きで『臨時総司令』を拝命しているが、その実、一介のサラリーマンだ。 何の力も権限も無い。


 そんな俺が『武器』として使う事を許されるのは……


『俺自身』


 ……のみだ。


 衛鬼兵団の中でも、特に優れた戦闘能力を持ち、自力で今の地位を勝ち取った作戦参謀を相手に、俺が勝てる望みは


『 ≒ ゼロ 』


 ……


 ……


 野華さぁ〜〜ん💦


 もう会えないかも〜〜〜〜💦

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