第3話 ソニック・ブーム

「総司令閣下」


 腹と鼓膜に響く声で、思わず耳を押さえた。


 珍しく、総参謀長が発言を求めて挙手している。


 ……総参謀長はエジプトの巨大な石像? のような見た目で軍議の進行役だ。 『低音バリトンの魅力』で、実に良~い声なのだが、俺の真横に居るもんだから、こちらを向いて話されると普通に喋っただけでも、その衝撃波ソニック・ブームで鼓膜が破れそうになる。


 俺は耳を塞いだまま「なんすか?」と聞き返した。


「総司令閣下と情報参謀に申し上げます。 学徒の本分は勉学! アイ? だか、コイ? だか……良く判らぬものにうつつを抜かす暇があるなら、兵法ひょうほうの一つでも覚えるべきではありませぬか?」


 ……!


 ……そう言われてみれば……確かにそうかも知れないけど……


 でも違うんだよ! 勉強がはかどるのは、大好きな人と一緒と時や『その人と同じ学校に行きたい』って願いを叶える為に必死に頑張る時なんだ!


 ……と言おうとしたが、その前に情報参謀が……


「総参謀長閣下……畏れながラ、閣下はいまだに、この世界のご理解があそう御座いマス。 『人類』は、我等が『帝国』や総司令閣下の御為おんために尽くす事以上に『異性』とツガイになる事を行動原理としておりマス。 ……それは最早もはや『執念』と言えますル!」


 お〜〜! 情報参謀! 良い事言った! 声は相変わらずだが!


相分あいわかった。 流石さすがは情報参謀! 重畳ちょうじょうである」


 ……総参謀長がそう言ってから俺の方を向き直り……


「総司令閣下……中言ちゅうげん、誠に失礼つかまつりました。 お詫び申し上げます。 軍議を続けましょう」とかなり音量を抑えた声で言いながら頭を下げた。


 ……ふとユイを見ると、笑顔で情報参謀に向かって手を叩くポーズをしている。


 初めて会った頃のこいつらは、冷徹で非情に戦う事しか能が無かったけど……徐々に変化し始めているんだな(胸熱)


「作戦参謀……今回の作戦を示せ」


おう!」


 総参謀長の指名で、猛獣のような顔をした、傷だらけの巨大な参謀が立ち上がった。 


「今次戦は実にシンプルかつ短期戦になる!」


 おっ! すげぇ自信!


「ターゲット2名以外の学徒全員を強制的にツガイとし、コイビトとす」


成程なるほど! 名案だ!」


 議事ドーム内は拍手喝采、雨、あられだっ!


 ズコ〜〜〜ッ!


 や……やっぱりこいつら判ってない(泣)

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