第8話 頭のおかしい女 2

窓を開けて部屋を換気してから、シャワーを浴びることにする。

そうだった。『鈴木』をもう少しで私の物に出来たのに。薬漬けだった頭がまだぼんやりとする。

冷蔵庫を覗くと缶ビールと、お茶のペットボトルしかない。

『河野 愛子』はビールを飲みながらテレビをつける。

プレイの後、月曜日には出社する予定だったのに。

仕事、どうしよう。

ソファに座ると、烏が居ない事に気付く。

『河野 愛子』は、がばっと立ち上がり網戸にしていたハズの窓が少し開いている事に気付く。

『逃げられた。まぁ、この高さから落ちたら助からないでしょ。』

烏は『河野 愛子』の会社の所有物だった。

色々な薬を試したり、電気を流したりと研究材料だったのだ。

烏と意識が完全にリンクしても、自分の意思では戻れないし、意識も混濁する事がわかった。が、またやってみる価値はある。

『河野 愛子』はプロテインバーを食べながら、自室の実験部屋に入って行った。


さて、『鈴木』は『河野 愛子』を追って来ていた。

マンションの前でうろうろしていたのだ。

せめて部屋が分かれば。上を見上げると黒い物体が風に煽られながら落ちてきた。

飛べない烏だった。

腕に飛び込んできた烏を見て、もう、どうでも良いか。と、烏を抱き抱えて『鈴木』はその場を後にした。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る