第7話 頭のおかしい女

男はシャワーを浴び終わって、脱衣場を出た。

『うわぁ!』

玄関に女が立っていた事にびっくりして、ひっくり返ってしまったのだ。

かろうじてタオルを腰に巻き、『え?だ、だれ?』と、女を見る。

こんなケバい女、知り合いに居たっけ?

真っ赤なルージュとマニキュア。ピンヒールも真っ赤だ。

服装は露出の多い花柄のワンピース。

『今晩は。』

女はインターホン押したけど出ないし、扉が開いてたから、玄関で待たせて貰ったと言い訳する。

服を着るまで待ってるから。と、言われてそうさせて貰う。

男はテレビ横の洗濯かごから、下着とシャツを探しだしながら女を何処かで見たと、思い出す。


あぁ、ゲーセンに来る週末の女だ。


玄関の方を振り返ると、女が目の前に立っている。

『鈴木くん、あなたには何度もチャンスをあげたんだけどなぁ。近所のコンビニで、スーパーで、雨の日の傘。こうゆうのって、男からの方が良いと思って、待ってたんだど、痺れを切らしちゃった。』

何を言っているんだ、この女は。

確かに近所のコンビニやスーパーで、この女を見掛けたことはある。雨の日の事は思い出せない。でも、それが何だっていうんだ。

男は後退りした。女は近付く。

女は男に唇を押し付けて来た。押しのけようと思えば押し退けられるが、女の腕は細く折れてしまいそうだった。口の中にコロリと薬のような物が入る。男はそれを受け入れ、ごくりと飲み込んだ。


目が覚めると、頭のおかしい女の要望を聞いてやった。

両手両足を縛って欲しい。口元には薬を染み込ませたタオルを巻いて、浴槽に放置して欲しいと。男は女が持参してきたロープやタオルを使い、要望通り浴槽に放置した。

女は満足そうだったし、男もそれでよしとした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る