第6話 自宅ではないマンション

『河野 愛子』と男の部屋はそんなに離れていなかったが、よろよろした足取りでは果てしなく遠く感じた。

比較的裏道を通って来れた為、あまり人と擦れ違わずに済んだ。

指紋照合でマンションの扉を開ける。薬品の臭いで鼻がツンとした。

自宅のアパートには戻れない。

部屋に入ると記憶がだんだんと蘇ってくる。


『河野 愛子は』抱き抱えていた烏をソファに投げ捨てた。


エラー音が鳴り響く。

『メダル補充しますね。』

『河野 愛子』はハッとして、補充しやすいように身体をよじる。

ゲームセンターで働く男は『鈴木』と言うらしい。

いつも一緒にいる店員に『鈴木』と呼ばれているのを聞いたことがある。

『もう、大丈夫ですよ。』

私に気があるであろう『鈴木』はにこりと微笑む。

今時の草食男子は、女性から行動を起こさないと何も出来ないらしい。


私から行動を起こさなければ。


『河野 愛子』約1年前から計画を立ててきた。

ゲームセンターでは、『鈴木』が1人の時にお絞りを貰いに行ったり、メダルを預けたりした。

ゲームセンター以外では、ストーカーに思われない程度に偶然を装って、近所のコンビニやスーパーで姿を見せた。


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