第5話 丸めたティッシュ
今日はゴミの日だ。
男のアパートは朝イチで出さないとすぐ大家から苦情が来る。
面倒だが、せっかく仕事が休みの日でも早起きしてゴミを集めて出さなきゃならない。
部屋のゴミ箱をひっくり返すと、丸まったティッシュがゴミ箱から何個か出てくる。
『あれ?』
いつもゴミの事など気にならないが一人暮らしのゴミ箱だ。
自分以外ゴミを捨てる人はいない。
いるとしたら、新しい同居者の烏ぐらいだ。
まさか烏がティッシュで鼻を噛むわけはないし…。
男はこっそりと朝食を食べている烏に背中を向けて、ゴミ箱に入っていたティッシュを広げた。
?何というか…排泄物のようだった。いや、烏の排泄物だ。
そう、まるでティッシュを広げて排泄して丸めて捨てたようだった。
この烏は俺が思っていた以上に頭が良いようだ。
どうする?何処まで知っている?試してみる価値はある。
男は仕事に行く準備を始める。
烏には休みと伝えていないはず。
上手く騙されるといいが。
『行ってきます。』
烏の頭をひとなでしてから家を出る。
男は玄関の鍵を閉めてから烏を撫でた右手をじっと見つめる。
男は烏の事が好きだった。
烏の方も男に懐いている気がした。
『出来れば殺したくないな。』
男はごみ捨て場まで足取りが重たかった。
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