4話 ナズナ

「スイッチオン!」

 轟音を轟かせながら俺たちの宇宙船は空へと上がっていった。

 奴らは飛び上がる宇宙船を見て口々に、「アイツらが逃げるぞ!」や「早く追いかけろ!」などと叫んでいる。作戦成功だ。

「俺の宇宙船が……」

 レオがなにかボヤいている。だが作戦を提案したのはレオなため、俺は何も言わなかった。

「検索、完了しました」

「おお、ありがとうウディ!」

「検索結果をお伝えします」

 ウディによるとナズナはもうほとんどがこの星に残ってなく、唯一本州自然博物館附属国立自然公園ほんしゅうしぜんはくぶつかんふぞくこくりつしぜんこうえんという所にのみ残っているようだ。

 また、そこはここから歩いても数十分という近場にあるようだ。運がいい。


「フィル、疲れた」

「しょうがないだろ、歩け」

「そうですよレオさん」

「えぇー」

 レオは宇宙船の運転が専門なため、体力はとても少ない。たったの数km歩いただけでバテるのだ。


 俺たちは公園に到着した。たくさんの植物が育っている。ミゴニアでは見られない珍しい光景だ。

「ナズナはどこだ?」

「白い花を探すといいですよ」

「ああ、そうだったな。ありがとう」

 そこから数分探すと、白い花のついた草が見つかった。

「これじゃないか?」

「これのようです」

「フィル、引っこ抜こうぜ!」

 俺は引っこ抜こうとした。だが勝手に数少ない草を盗って行ってもいいのかという考えが脳裏を過った。

 アンディの為だ。そう考えると少しだけ、本当に少しだけ気が楽になった。

 俺は一思いに引っこ抜いた。意外にもすんなりと抜けた。

「よし、帰るぞ」

「宇宙船はどうするんです?」

「あ……」


 結局何とか遠隔で宇宙船を呼び寄せ、帰還した。

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