2話 目的
密輸をしていると時々思う、なぜ密輸なんて始めたんだ、と。自分には目的がありながらもなぜという言葉が頭から離れない。意味なんてないんじゃないかと。
「もってもあと2ヶ月といったところですね。残念ですが」
「2ヶ月…」
俺は頭を抱えた。俺の唯一の肉親である妹、アンディの余命を宣告されたのだ。
アンディはこの星でもとても珍しい奇病にかかっており、治すことはこの国では困難だと言われた。しかも今は鎖星により他の星に治療を受けに行ったり、医者を連れてきたりすることができず、唯一の薬もこの星では作れないという、まさに八方塞がりだった。
「
「!?冷凍保存ですか?構いませんが鎖星が解除される頃にはあなたも亡くなっているのでは…」
この星で冷凍保存は特効薬のない病にかかった人や上層部などの特権をもつもののみが使うことができる。そのため俺は使うことができない。
「いや、いいんです。とにかく冷凍保存して状態だけ保てるようにしてください」
「わかりました…」
「フィル、大丈夫ですか?」
「ウディ、すまん」
俺は基地で目を覚ました。どうやら夢を見ていたようだ。昔の懐かしくも辛い夢だった。
俺はアンディを救うために密輸をしていた。正確には密輸自体は目的ではなく、密輸を通してまたはそのついでに薬の材料を集めようということである。
もしも薬が効かなかったら…、そう考えることはしないようにしている。
「2人とも、もうすぐ目的地の『地球』につくぞ!」
レオの声が響いた。
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