鎖星
月簡
1話 鎖星
「おい、兄ちゃん!ミカン買ってかないか?」
「いや、大丈夫だ」
この星で最も栄えるこの街、バンユドアで俺はある種の犯罪行為を行っている。まず、この星では鎖星という他の星全てとの関係を断つ政策が行われている。
俺は言ってしまえば密輸人である。今だって歩いて隠れ家に向かっている。隠れ家はバンユドア郊外にあり、店などもほとんどない静かなところに佇んでいる小さなビルの地下にある。俺は隠れ家に入るなり
「出発するぞー準備しろー」
と声を上げた。
すると奥から
「はーい」
という声が聞こえてきた。俺が発見し仲間にしたai、ウディ・カイマン・マグダレノの声だ。もちろん密輸は宇宙船て行うため宇宙船の運転手がいるのだが…また宇宙船の改造に夢中になっているのだろう。
ガレージに向かうと思った通り、運転手のレオ・デ・ハスが宇宙船の改造をしていた。
「おい、レオ!出発するぞ」
「え、もうそんな時間かよ」
その口ぶりからするともう数時間はやっているのだろう。だが俺がそんなことを考えてを仕方がない。しかも今すぐ出発しなければ密輸の約束の時間に遅れてしまうのだ。レオにその趣旨を伝えると、すぐにウディをのせ、出発してくれた。
「ここを通るときはいつもヒヤヒヤするな」
レオが言っている。ここはこの星の大気圏周辺で、密輸に目を光らせる国の宇宙船が徘徊している。俺たちはバレないよう、宇宙船のクロークを作動し、突破をする。
大気圏をこえれば後は数時間の船旅となる。今から行くのは我が星ミゴニアと元友好関係にあった星、マザルだ。この星には俺のお得意様がいる。そいつに法外な値段でミゴニアのものを売りつければ、数百万の利益となる。そのため俺たちは月に1回は売りに行くようにしている。
「つきましたよ、フィルさん」
「ああ、ついたのか。おこしてくれてありがとう、ウディ」
フォルとは俺の名前でミドル、ラストネームも含めるとフォル・ウィリアム・テイラーという。ミゴニアでは身分に関わらずファーストネームで呼ぶ風習があるため、みんなファーストネームで呼び合っている。
「レオ、バレてはいないだろうな?」
「ああ、もちろんバレてないぞ」
俺たちはそそくさと宇宙船が出て、お得意様の邸宅へと向かった。俺たちが密輸人であることは向こうもわかっているため、すんなりと入ることができた。
「これはミカンといい、我が星の特産品で一部の病原菌を殺したり、高い栄養価を持っていたりします」
「買おう」
「ありがとうございます」
このように俺が商品の紹介をする、そしてお得意様が気に入れば買ってくれるといった具合である。
そんなこんなで約1時間のセールスを終え、俺達は帰路についた。
「さあ、大気圏を通るぞ!」
「レオさん、気をつけてくださいね」
「ああ」
ウディは心配性気味なため、いちいち心配をしてくることがある。だがそれもあいつの優しさと知っているため、何かいうことはない。
俺はいつものことながらしっかりと次の目的地を告げた。
「じゃあこのあとはラナさんのとこ行くからな」
「はいはい、めんどくさいな…。情報だろ。対価をさっさとよこしてくれ」
俺にかったるそうな口調で話しかけてきたのはミゴニア随一の情報屋ラナ・ド・ブレアだ。めんどくさがりだが情報の質は本物である。
俺は金を渡した。
「残りの材料はなにがあればいい?」
「残りはあと4つ。もう残りは少ないぞ。お前も大変だな」
「さっさと教えてくれ」
「地球という惑星にあるナズナという植物だ。」
「ナズナ?」
「ああ、どうやらその星でも食べることもあるらしいが、私達の体には特別良い効果があるようだ」
「わかった。情報ありがとう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます