魂喰らいの剣を担いで宝物庫を開く

FIIFII

第1話

 淡く、儚く、散っていく光めがけて刃を振るう。

 いち、に、さんと失われて。

 残った彼らまたは彼女らは、反抗しようと一縷の望みを胸に抱いて突撃する。

 私は無慈悲に、無感動に斬り捨てていく。


「はぁあ……」


 息を吐いた。この部屋の光が全て消失したからだ。

 視界に映るのは赤く紅く朱い液体のみ。

 刀にこびりついたそれを落として、足を進める。

 廊下を通り、隠し階段を登り、辿り着いた。


「魔王」


 玉座に踏ん反り返るのは、ヒトに角が生えた生物。

 強者は皆、人型の姿で生まれ落ち、最後にはヒトの手により滅びゆく運命。


「よくぞきた、が……貴様ではない」

「生憎と、勇者にはこの刀の餌と成ってもらった故に」

「小娘……!」


 勇者の魂は刀のレベルを三段階も飛ばして上げてくれた。

 その力で悪を討つと約束した。

 約束は契約と成り、今ここに果たされんとしている。


「征くぞ魔王。逝かせてやろう」

「ほざけ小娘。返り討ちだっ!」




 一撃目。

 刀の反りを使って魔王の懐へと潜りこみ腹部に。

 二撃目。

 魔王の技を流しつつ肩に。

 三撃目。

 奥の手だという火炎地獄を斬って、正面から頭蓋に振り下ろした。


「ァガッ?」


 何が起こったのかもわからぬまま、魔王は死んだ。


「他愛ない……」


 この程度かという溜息を吐きながら、玉座の向こうへ歩む。

 目指すは宝物庫。

 宝箱というには些か大きすぎるそれを見つけると、口元がニタリと歪んだ。

 南京錠を斬って捨て、中身を確認しようと開けると…………!




「眼が……っ」


 光の奔流が溢れだし、たちまち部屋を覆い尽くした。

 数秒後、漸く収まったかと思って目を開けると、見に覚えのないネックレスが首に掛かっていた。


「これは……」


 ネックレスを外してみようとすれば、鎖の部分に触れられない。

 宝石の重さは胸に沈むほどだ。


「……呪いの装飾品か? 厄介な罠を」


 なんとか取り外そうと四苦八苦していると、宝石が割れた。


「え?」


 割れた宝石は胸へと吸い込まれるように消え、気付けばネックレスごとなくなっていた。

 まるで何事もなかったかのように思えたが、宝物庫に在った姿見を見るとそうも言えなくなった。




「なぜ、私に角が……?」

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