第6話 節電も、ほどほどにね!節電の神様が消えたら、その後に、フライパンが残された。

 夫は、まだ、帰れないだろう。

 男って、弱いなあ。節電の神様は、強そうなのに。

 神様のいう節電の運動を続けると、ポイントがたまるんだとか。ポイントに応じて、生活用品やらを、もらえるんだとか。

 「しかし、ですね」

 「はい?」

 「節電のしすぎにも、片付けにも、注意をすべきでしょう」

 「…はい?」

 「本当の幸せを節約するのは、悲しいものです」

 「…はい?」

 「節約しないと決断をするというのも、節約の 1つです」

 …ほえ?

 「節電も、ほどほどにできて、大満足」

 「そうですか」

 「でしょうね」

 「節電が上手くいくと、多くの人が、生き方が変わった、人生が変わったと、おっしゃってくださいますね。寒い日本に、笑顔が取り戻されていく。ここに、節電の素晴らしさの本質があるような気が、しませんか?」

 「?」

 「…ですかね」

 「節電は、良いものです!節電で、本当の幸せを、手に入れましょう!」

 「ええ、そうですねえ」

 「ですよねえ」

 「本当の幸せを!」

「本当の幸せを!」

「本当の幸せを!」

ちょっと、危ない3人。

「さあ、お2人とも?」

「はい」

「はい」

「心の底から、節電を続けたいと思ったのなら…」

 「はい」

 「はい」

 「私は、消えなければ、なりませんがね」

 「…はい?」

 「え、あ?ちょっと…?」

 「…お茶、ごちそうさまでした。話を聞いてくれた礼に、節電ありがとうキャンペーンの幸せを、置いていきますね?」

 それが、神様の、最後の一言だった。

 「煙のように、消えた」

 それって、こういう状況をいうんじゃないだろうか?

 神様の座っていた場所には、レベルの高そうなフライパンが、残されていた。

 「あ…これって!」

 買おうと思ってはいたけれど、ちょっと高そうだし、買うのをあきらめていたフライパンだった。

 もらって、良いんですか?

良いんですよね?

 「何て、幸せ!ねえ、お母さん?」

 「そうだねえ」

 私のほしかった、フライパン。

 節電の神様は、皆、お見通し?





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