第5話 節電は、恋や愛に似ているという。さらに、片付けにも、似ているらしい。

節電の神様をもてなすのって、難しい。

 「すみませんねえ」

 「…どうぞ」

 「おお。新茶の、良い匂い」

 「それで、神様?」

 「はい」

 「どうして、部屋を開けることが、節電になるんですか?」

 「それは、ですね」

 「はい」

 「部屋に、太陽熱をためるためです」

 カーテンを開け、日光を部屋に入れる。これだけでも、部屋全体が温まる。

 冷蔵庫の温度調整も、節電の大切なポイントらしい。

 冬場は、わざわざ、冷蔵庫の設定温度を低くしなくても良いんだってさ。

 「冷蔵庫の温度設定が、強、中、弱の、 3種類だったとしますよね?」

 「ええ」

 「はい」

 「冬場、ですからね。そもそもから、まわりの温度が低い」

 「ええ」

 「はい」

 「そういうときには、弱で、充分に、食品の冷蔵ができます」

 …そう、いわれれば。

 「余計な手間は、省きましょう」

 …あれ?

神様のこの言葉に、ビクッ。

 余計な電力を省くって、部屋の片付けとかに、似ていた。

 「ようし!これに、片をつけてやるぞ!」

 自分自身の出した余分に、思い切った判断をする。

ほうら。

節電も、片付けも、似ていないかな?

 「だれかにもらった物は、手放せない」

 「思い出の品だから、手放せない」

 「恋愛系の物も、処分できない!」

 「コツコツと貯めた金で、買った物。捨てられるわけがない!」

 人は、悩む。

 節電も、片付けも、恋や愛に近いのか?

 「特に、娘さん?」

 「な、何でしょう?」

 「節電も恋や愛に近いと、思いませんでしたか?」

 「…」

 「その気付きは、素晴らしい」

 「…あ、ありがとうございます」

 見抜かれて、ほめられた。

 「そこで…」

 「はい」

 「節電ありがとうキャンペーンに、登録してみませんか?」

 …何、それ?

 聞くと、ウェブ登録を済ませると、「ポイントを集めてハッピーラン」なる運動に、参加できるようになるんだという。

 「神様的に、ハッピー気分。ここまで、真剣に、聞いてくださるとは!ありがとうございます」

 喜んで良いのか、ビミョー。





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