第3話 「態度が 4LDK」っていう言葉を知っていますか?夫を追い出してから、一週間!

 女性の、勝ち!

 「じゃあ、あなたが、この家から出ていきなさい!」

 「…!」

 何も言えなくなる男の、面白さ。

 「この家から、出ていきなさい!そうすれば、電気代も浮くでしょう?」

 言ってやった。

 言ってやった。

 家から追放された夫は、近所の公園で、泣いていた。

 我が家には、母と私と、女性 2人だけ。シングルマザーの新しい生活が、はじまった。

 夫がいなくなって、 1週間。

 「お母さん?まだ、帰ってきませんねえ」

 「あんた、言いすぎたんじゃないの?」

 そのときだ。

 ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン…!

 「チャイム、うるさい!」

 玄関を、開けると…。

 覆面をした、プロレスラーのような人物が立っていた。夫を思わせるような背丈に、声。

 男性のよう、ですが…?

 「どちら様でしょう?」

 私のかたわらに立つ母親が、声をかける。

 覆面が、ささっと慣れた手つきで、名刺を出してきた。見慣れない言葉が、書かれていた。

 「節電の神様」

 母親は、冷静。

 「…おや、おや。神様、でしたか。どうぞ、お上がりください。お茶を、淹れましょうかねえ」

 怪しい覆面を、すんなり、家の中に招き入れ。覆面は、リビングのこたつの中に、入り込んだ。

 「態度が、 4LDK ?」

 学校の先生のように失礼しちゃうなあっていう感じの、覆面。

 「やだ!すみません…。こたつの電源は、入れておりませんでしたね…。ごめんなさい」

 母親が言うと、節電の神様という覆面は、満足そうに笑んだ。

 「いえ、おかまいなく」

「今、こたつの電源を、入れますから!」

 「いえ、おかまいなく」

 「でも…」

 「良いんですよ、お母様?」

 「でも…」

 「節電の心には、幸せあり」

「?」

 しかし、冷たいこたつの中の会話なんて、いやだ。すぐ、こたつの電源が入れられた。

  3人で、こたつに入って、茶を飲んだ。

 節電の神様を語る覆面が、先手を打った。

 「節電のコツは、ですねえ」





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