第2話 「声をあらげる」って言う男子も、値上げ社会のように、いや。「(声を)荒らげる」は、あらげるじゃなくて、あららげるです!

 「声をあらげる」っていう男子も、値上げ社会のように、いや。

念のため、また、言います。

「声を荒らげる」

それ、声をあらげるじゃなくて、声をあららげるって読むんだよ?

 「男、だっさ!」

 「俺に、怒るなって!」

 母は、私たちのケンカを、楽しそうに見ていた。

 祖父も、楽しそうに見ていた。今は、遺影という写真の中で。

 値上げ社会と、戦おう!

 「国が、何とかしてくれるんでしょ?」

 今は、そう信じられる日本じゃありません!

「でさ?」

 「何よ、あなた!」

 「実はな」

 「だから、何?」

 「電気にも、得意ジャンルと、そうでないジャンルがある」

 「ふうん」

 「電気ケトル、電子レンジや炊飯器は、たくさんの電気を使う」

 「うん」

 「そういうジャンルは、電気的には、得意じゃない」

 「それで?」

 「だから、そこは、ガス任せ」

 「…そう」

 「それも、節電だ!」

 でも、それだけで、節電は進むのかなあ?

 ピンチは、まだまだ。

 「それは、そうと…」

 「何だよ、お前?」

 「新しいフライパンを、買ってこなくっちゃね」

 「何?何で、今、その話になるんだ!」

 男女の、差。

 男は、こういう、がらっと話が変えられることに、耐えられない。だから、女は気まぐれで困るって、言われちゃうわけだ。

 「フライパン、だと?俺が、ためになる話をしていたのに!」

 ふうん。

 男のプライドが許さないって、わけか。

 このときには、こんなこと、言えなくなっちゃっている。

 「あなたのために、買いたいのに!あなたって、オムライスが、大好物でしょ?今まで使っていたフライパン、ダメになっちゃってさ。新しいフライパンを、買いたいんだ。それ使って、あなたに、美味しいオムライスを、食べてもらいたいんだよう!」

 もう、遅い。

 夫は、聞く耳を、もてていないだろう。

 「女は、わけがわからない!」

 夫が言った、そのとき。

 私の気持ちが、電気代のようにはね上がった。

 「じゃあ、あなたが、この家から出ていきなさい!」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る