第20話

「出ました!」

 やりました!10円、これも私が食べたときは10円だったのですね!す、すごいですっ!

 サラミとチーズがあれば、立派なピザです!……とろけなくてもこの際構わないです。タラが混じっていても、シーフードピザっぽい味も味わえて一挙両得、一石二鳥です!

 おやつのチーズーは指で押しつぶして細かくして載せました。

 フライパンの蓋の上にピザモドキ……いいえ、もうピザです、ピザなのですっ!ピザソースモドキだけではピザモドキですが、サラミとチーズを載せれば立派なピザです!ピザなのです!

 ピザをフライパンの蓋の上に置いて、上から石で隙間を作ってフライパンをかぶせます。ちょっとだけ窯っぽい感じにして焼きます。

 はぁー、ピザの匂いです。

 やっぱりチーズは溶けませんでしたが……。

 ピザカッターもないので、短剣で切り分けます。では、いただきますっ!

 ぱくり。

「はうぅぅぅ」

 おいひいでふ。

 ぴざでふ。

 もぐもぐ。

 チーズは溶けてないけれど、味はチーズです。くふっ。

 最高です……これは、間違いなくサラミピザ。うまいんだ棒で作ったソースもピザソースっぽくちゃんとなってます。

 おいしいです……。

 これはリピートします。リピートです。

 そうだ、照り焼き味のうまいんだ棒を使えば照り焼きピザっぽくならないですかね?

 ……明太子味なら、明太ピザ……?

 ふ、ふふふ、ふふふ。色々と夢が広がります!

 パンは、思っていたフワフワのパンじゃなくてペタンコでしたが……ピザクラフトだと思えば食べ方の幅が広がります!

「お、見つけた!いたいた!」

 最後の一口を口に入れようとしたところで、大きな声が聞こえてきました。

 この声には聞き覚えがあります。

「兵士さん?」

 優しい兵士さんの姿を想像していたのに、振り返ると、そこには背の高い……。

「かっこいい……」

 思わず声がもれました。

 うっ。心の声が。き、聞かれてないですよね?小さな声でしたし……。

「ん?なんだ?」

 声は兵士さんなのです。でも、顔の半分以上を覆っていた兜とか口元覆ってたやつとかが今はありません。

 素顔晒してます。服装も、鎧とか取り外してちょっと胸元はだけたラフなシャツに皮のズボンはぴったりと足に張り付いていてセクシーです。

 そして何より……その素顔が……。

 優し気な彫の深い目元だけが見えていた時には、西洋風の顔だなぁくらいにしか思わなかったけれど……。

 西洋風というか、アラブ風というか、足して二で割った感じで、脂っぽくも胸毛っぽくもない……日本人が……いいえ、たぶん全世界の女性が好きそうなかっこよさがあります。

 少し前に話題になっていた、イケメンすぎて国外追放されたという人を思い出しました。

 30歳になるかならないかといったところでしょうか。東洋系じゃない顔は年齢が分かりにくいのですが……。

「な、なぜ……兵士さんは兜を取ってしまっているのですか?」

 危険極まりないです。

 歩くイケメン凶器です。お兄さんは美しさが凶器でしたが、なんていうか、そこにいるだけで周りの女性が妊娠するみたいな表現、初めて実感しました。そういう風に思わず表現したくなるかっこよさが世の中にはあると……。

「え?」

 兵士さんがちょっとびっくりした顔をしています。

 あああ、変なことを言ってしまいました。四六時中兵士さんはお仕事をしているわけではないでしょう。

 きっとお休みなのです。お休みなら私服になるはずです。そして、私服で兜をかぶっているなんてコスプレイヤーでもやりませんよね。

「あ、ああ。いい年して髭も生えてないから恥ずかしいんだが……」

 は?

「伸ばそうと思っても、薄くてはげかけた頭みたいな髭しか生えないからあきらめたんだ」

 兵士さんが顎を撫でながら恥ずかしそうな表情を見せました。

 きゅぅん。

 ちょ、待ってください。確かに陛下も立派なおひげを生やしていましたし、街の中の人たちはいろいろな形のおひげを生やした人が多いなぁとは思っていましたけれど……。

 ま、まさかの、この世界……いえ、国だけかもしれませんが、美醜の基準は髭?髭なの?

 イケメン兵士さん、もしかして、この世界では容姿に自信が持てない部類なのですか?うーそーでーしょう?

「それに、流石にずっと兜に口元も覆っていると暑いからね……」

 そういえば、街中の人は結構どっかりした体系の人が男女とも多かったんですけれど……。太っているのではなく、骨格からしっかりした感じの……。マッチョさんも多かったように思います。そうすると、ぴたっとしたズボンをスマートに履きこなしている兵士さんは少し細すぎると言うことになるかもしれません。

 いいえ、ちょうどいいんです。プロ野球選手の一流ピッチャーの立派なお尻とかじゃなく、ダンサーとかのこう機敏な動きができそうな引き締まった……いえ、失礼しました。とにかく……。

 筋肉はしっかりついてむきむきですが、見せる筋肉ではなくて実用的な筋肉……細マッチョ……細いというか引き締まりマッチョ……うーん。うまい言葉が見つかりません。身長が2メートル近くあるため、細長く見えてるんですかね?腕だけを見ればとてっも筋肉ついてて太いんですが……。

「火を起こせたんだな」

 兵士さんが焚火に視線を向けました。

 ああそういえば、火はおこしたことがあるかと尋ねられて、ないと答えましたね。

「あ、はい、あの……いろいろありがとうございました。このフライパンもとても役に立っています」

「それはよかった……っと、ごめん。食事の邪魔をしちゃったな」

 手に持っていた残りのピザに兵士さんが視線を落としました。

「あ、いえ、もう食べ終わるところだったので、大丈夫です」

 慌ててピザの残りを口に入れようとしたところで、兵士さんが私の手首をつかみました。

 うひぃー、イケメン、イケメン、イケメンがぁぁぁ私の手をぉぉぉぉ!

「この小さな粒は……まさか、肉のかけらか?」

 え?おやつのカルパーンを切ったやつでしょうか?

「小さい上に、硬そうだな……というか、こんなに細かくしたのは何でだ?硬いから食べやすいようにか?」

 まぁ、おやつカルパーン自体が小さいですし、それをさらに切りましたから……。それに、ピザのサラミは乗せすぎてもダメなんです。ちょうどいい量というのがあるのです。むしろ、割と贅沢に多めに載せましたよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る