第7話
「あ!そうです!」
突然思い出しました。
米粒魔石を取り出して、いつもの呪文を唱えます。
「うまいんだ棒」
すると、すぐに思い浮かべていたうまいんだ棒豚キムチ味が出てきました。
ネットで見たことがあります。豚キムチ味のうまいんだ棒を使ってチャーハンを作ったらとても美味しかったというのを。味付けに使えるということですよね。
チャーハンは無理ですが、モヤシの豚キムチ風炒めは作れるんじゃないでしょうか?
それではレッツクッキングです!
うまいんだ棒豚キムチ味を袋に入れたまま、もんで細かく崩します。
それを炒めているモヤシにふりかけます。
「味は足りるのかな?」
木の棒でまぜて一旦火からおろします。どうにも味が薄そうです。
追加でうまいんだ棒を2本だし、今度は袋から取り出して、まず袋についた粉をモヤシでこそげ落とします。
それから、木でうまいんだ棒の味の粉が付いている表面を削りモヤシにふりかけます。
「あんまり本体もたくさん入れるとモヤシの存在感が小さくなっちゃいますもんね……」
まわりを削ったうまいんだ棒はあとでちゃんと食べますよ。
作業を終えてもう一度火にフライパンをかけ、モヤシを炒めるのを再開します。
あまり炒めすぎてはモヤシのシャキシャキ感がなくなってしまいますから、適当なところで火からおろします。食器はないので、ちょっとお行儀が悪いですがフライパンからそのまま食べることにします。
「いただきます」
モヤシの豚キムチ風炒め、口元にもって行くと、しっかりキムチの匂いがします。
「はぁー。久しぶりの料理です」
パクリと口に入れます。
「お……おいしぃーっ!」
モヤシがちゃんと豚キムチ味になってます!しかも、適当にキムチの元で味つけましたっていうより、甘みや旨味があって美味しいです。
モグモグ。モグモグ。
ああ、ご飯、ご飯が欲しくなる味です。
うううー、贅沢はいけませんが、ご飯が欲しいですぅぅ。
モグモグ。
仕方がないので途中でさっき周りの粉を落としたうまいんだ棒を食べながらモヤシを食べます。
ご飯の代わりです。……うまいんだ棒ご飯味が無いのが悔やまれます。
いえ、ご飯味ってなんだろう?自分で思いながら首をかしげました。
「ごちそうさまでした」
両手を合わせてから、お片付けです。
まずはフライパンを水で洗います。
「あ、もしかして、お湯を沸かすこともできますよね?」
水以外が飲めるのではないでしょうか?……って、水じゃなくて、お湯が飲めるようになるだけでもちょっと変化があると思うんです。
いえ、何かとかして作れるのではないでしょうか?紅茶の飴をお湯に溶かして紅茶とか?
「だめです!10円で買った記憶のある飴はコーラ味です。お湯で溶かしても絶対コーラにならない自信がありますっ」
炭酸がそもそもありませんし。
「はっ!そうです、忘れてました!飲み物と言えば!……」
ここで張り切って呪文です。
「粉ジュース」
やりました!米粒魔石が、見事に粉ジュース葡萄味に変わりました。
駄菓子屋で10円で売っている粉ジュースです。ジュースの元の粉のお菓子なんですけど……実際には水に溶かして飲まずに粉のまま食べていましたから、袋に入った状態で出てきました。
あ、そういえば何年か前に20円に値上がりしたという話を見ましたが出てきたということは、私の魔力のレベルが上がったのでしょうか?それともモヤシは特売価格の10円で買ったことがあったから出てきました。通常は20円とか30円とかしますよね。……ということは、私が買ったことがある値段ということなのでしょう。今は20円だったとしても、私が買った時には10円だったから出てきた。うん、ラッキーです。
さて……。
「人生で初めて、粉ジュースを粉じゃなくてジュースにして飲んでみます」
まさ、異世界にきて体験することになるとは。本当分かりませんね。
せっかくお湯がわかせますが、水の方がいいでしょう。
コップに粉ジュース葡萄味を入れます。それから先ほど出した水の残りがフライパンにあるのでそれをコップに入れすぎないように慎重にいれます。
粉ジュースは、コップ1杯水を入れると薄すぎると子供のころに聞いたことがあります。水はコップに半分以下が鉄則だそうです。……本当は水を何㏄入れましょうとか作り方が書いてあったはずなのですが、子供時代の話ですからね。友達も適当に水を入れていたんだと思います。
およそ目分量で100ccほど水を入れて、木の棒でまぜます。さっき箸代わりに使って洗ったものなので綺麗ですよ。
ぐるぐるぐる。
では……いただきます。
「ふ、ふわぁ!葡萄ジュースです!ちゃんと葡萄ジュースになってます!果汁10%未満とかの甘い葡萄ジュースですっ」
おいしい。久しぶりの水以外の飲み物です!
次はオレンジ味にしてみましょう。他にも味がありましたが、食べたことはありません。こんなことなら全種類制覇しておけばよかったです。
さて。お腹も膨れましたのでフライパンをよく乾かして燃え残っている炭になりかかった木を入れます。それからフライパンの蓋をします。そう、このフライパン蓋がついてるんですよ。鉄?なんかキャンプのダッチオーブンみたいな感じです。フライパンも蓋も分厚い金属で出来ていて結構な重さです。フライパンと蓋を合わせて2キロくらいはありそうです。キャンプ飯とか作れそうです。
……材料がないですけど。
さて。まだ熱い状態だけれど、フライパンの中に入れて蓋をしたので火は消えるか不完全燃焼で炭が出来上がるかすると思うんです。それで、冷めたら鞄の中にしまいましょう。冷めるのを待ってから移動するとますます街につくのが遅くなってしまいます。持って行かないと言う選択肢もありません。これがあれば次に火をおこすときに時間短縮ができるはずです。そうじゃなければ……。
腕がプルプルになったことを思い出します。
……ううう、もうあれは勘弁なのです。
「あ、魔石発見」
米粒魔石は私の命綱ですからね。拾っていきます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます