第8話

 あれ?町についたら、兵士さんにもらった魔石で誰かにパンを出してもらえばいいのでは?

 ……そうしたらパンが食べられますね!ああでも、頼み事をするのに対価がないということはないですよね。

 困りました。お金は持っていません。

 当たり前ですが、仕事を見つけなくてはいけません。働いてお金を稼いで、そうそう住むところも探さないといけません。

 最悪は、この数日と同じように野宿で、米粒魔石で飢えをしのぐ……。うん、まぁ、何とかなるでしょう。両親が突然亡くなったときも何とかなりました……。

 一人は慣れています。

 寂しいことにも……慣れています。

 日が落ちたので、兵士さんに貰った毛布にくるまって道の端に寄って眠ります。

 大丈夫……。

 兵士さんの目を思い出します。優しい目をしていました。

 大丈夫です。きっと。私にはこの毛布があります。兵士さんがくれた……毛布と一緒です……。

 すやぁ。


 4月19日

 おはようございます。

 昨日は夢に兵士さんが出てきました。兵士さんのことを考えながら眠ったせいでしょうか……。

 兵士さんの大きな体に包まれて、抱きしめられて……抱っこされて、ゆらゆら揺らされ……。

 子供扱いどころか、赤ちゃん扱いされる夢でした。

 私、大人です。ぷんすかっ。って、まぁ、夢を見たのは私自身なのですが、赤ちゃん扱いってひどすぎませんか?

 どうせなら、今度夢に出てくるときは、「おねむでちゅか」とか、あの顔に言わせてみたいです。ちょっとした子供扱いした報いを受けるといいんです。ふんすっ。

 毛布を折りたたんで鞄の中にしまいます。

「朝ごはんは何を食べましょう」

 ……って、まぁ何もなにも、モヤシかうまいんだ棒なんですけれども。

 朝から火をおこすのは大変なのでモヤシは諦めましょう。

 10円……他に何かありませんでしたでしょうか。

「ふ、ふあっ!」

 唐突に思い出しました。

 というか、何故今まで忘れていたんでしょう。

「チィロールチョコレート!」

 米粒魔石がチィロールチョコレートに代わって、手の平に現れました。

 そうです!そうです!

 10円お菓子の二大巨匠といえば、うまいんだ棒とチィロールチョコじゃないですか!

 なんで今まで忘れていたのでしょう。

 手の平に現れたものは、黒っぽい包みに、カラフルなアルファベットのでチィロールと描かれたパッケージの包み。

 シンプルな定番チィロールだ。

 他に、何を食べたことがあったかなぁ?

「チィロールチョコレート」

 ミルクチョコレート味が出てきました。白と黒の乳牛模様のパッケージ。

「チィロールチョコレート」

 ビスケットが入っているやつもあったはずです。

 出てきました。水色のパッケージにビスケットの絵がかいてあります。

「チィロールチョコレート」

 抹茶。イチゴ。ピーナッツ。はい、問題なく出てきましたよ。

 あ、だんだん思い出してきました。

「チィロールチョコレート」

 チーズケーキ味。ティラミス味。ホットケーキ味。チョコタルト味。イチゴのショートケーキ味。なんかケーキシリーズが売っていて色々食べましたね。これも問題なく出てきました。20円のちょっと大きなサイズではなく、ちゃんと10円のやつを食べたようです。

「チィロールチョコレート」

 イチゴ大福、きな粉もち、さくらもち、チョコもち、ミルクもち……の、餅系は全滅です。う、うう、出てこない。餅、餅……。

 チョコの中に餅入っているのを思い出したのに。中身の餅を取り出してそれだけ食べたら餅を食べられるワンチャン……と、思ったのに。……どうやら餅シリーズは10円じゃなかったもよう。そういえば、6個入り100円とか100円均一で買った気がします。うううう。

「はうっ!」

 気が付けば、チィロールチョコレートが30個近くありました。

 つい、色々な味食べたなぁと思い出せるだけ思い出しながら出してしまったようです……。

 5個ほど食べたら、もういいとなりました。

 朝食にチョコレートだけは厳しいです。カロリーだけはしっかりとれたはずなのです。

 今日こそ町まで歩きます。

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