第5話
「ふおおおおっ!」
食べ物です!
米粒サイズの魔石がうまいんだ棒に姿を変えています!
早速包み紙を破いて、うまいんだ棒……どうやらサラダ味です……に、かぶりつきます。
サクサクっと美味しいです。ああ、でも口の中の水分不足で上手く飲み込めません。
慌ててコップを取り出し、拾った米粒魔石の一つをコップに入れます。
「水」
すると、勢いよく水が出て、コップから豪快にあふれ出ました。
「ふえええっ!な、なんでこんなに大量に?!って、いただきます!」
ごくごく。ぷはー。
美味しいです。
お水、美味しいです!……冷静になるとちょっと塩素の臭いがします。
「……」
このお水、どうやら水道水だったみたいです。喉がからっからだったので、水道水でもとても美味しいです。
ちょっと落ち着いたところで、米粒魔石をもう一つ取り出します。
「うまいんだ棒」
また、ちゃんとうまいんだ棒が目の前に現れました。しかも、頭の中で今度はコーンポタージュ味を想像しながら呪文を唱えたので、目の前に現れたうまいんだ棒はコーンポタージュ味です!
「いただきます」
袋を破いて気が付いたけれど、さっき食べたサラダ味の袋は消えてしまいました。食べ物以外の部分は食べ物を食べると消滅しちゃうみたいです。
……えっと、エビとか食べた時にエビの尻尾はどうなるんでしょう?消えるのか、食べられないこともないから残るのでしょうか……?
気になったので試してみたいところですが、エビを出せるとは思えません。
……何故って……。
手元の小指の爪サイズの魔石と、米粒サイズの魔石を見比べます。
魔石の大きさで出せるものの価値が違うというのは間違っていないはずです。兵士さんもパン位なら出せると言って小指の爪サイズの魔石をくれました。
そして……。魔石を食べ物にする魔法を使うのに、魔力が必要で、私にはその魔力がとても少ないのも事実だと思います。もしかすると魔力はあっても使える魔法が小さなものなのかもしれません。ファンタジーな漫画や小説でそういうのがありました。
ファイアーボール小とか、ファイアーボール大とか。初級だとか中級だとか魔法にあるというやつです。私は魔法を今まで使ったことが無かったので初心者レベルなのではないでしょうか。
レベルがあるならレベル1とかだと思うのです。
うん?レベルがあるのならば、もしかして?
ピンときた私は、小さな声でファンタジーな言葉を口にします。
「ステータスオープン」
確か、魔法があるよな異世界では、こう唱えると自分のレベルとかが確認できたはずです。
目の前に半透明の映像……見えませんね。
手元に見えるのでしょうか?視線を落としても見えませんね。
空に浮かぶとか?見上げても見えません。
念のため、360度見回してみました。
……ステータスは表示されないみたいです……。
「うまいんだ棒」
2本目も食べ終わったので、今度は明太子味を想像しながら呪文を唱えました。すると赤いパッケージの上手いんだ棒が現れます。
うまいんだ棒というお菓子のすごいところは、安くて美味しいというのもありますが、種類が豊富というのもすごいところだと思うんです。ついついお菓子売り場に行くと、全種類制覇とかしちゃいたくなりますよね。
いえ、制覇は出来ないんですけど。気が付くと新しい種類が増えてるんです。
サクサクとうまいんだ棒明太子味を食べながら、魔石について考えます。
うまいんだ棒は10円。
水は水道水。どこかで1リットル0.2円だと見たことがあります。10円だとすると何リットルも出てくるんですよね。
パンは100円くらいでしょうか。この世界のパンの価値は分かりません。小指の爪サイズを仮にパン、100円だと考えると、今の私には100円の食べ物を出す魔法は使えないけれど、10円の魔法は使えると言うことになります。
……えーっと、20円とか30円とかかもしれない?100円よりは小さいってことは確かだけど、分かりませんよね。
試してみましょう。
ちょうど3本目の上手いんだ棒を食べ終わったので、米粒魔石を取り出します。
「ベビーハートラーメン」
食べきりサイズの小袋のベビーハートラーメンを頭に浮かべて呪文を唱えました。
……米粒魔石は反応しません。
「えーっと、いくらだったでしょうか。50円?30円?……もう少し安い物じゃないと駄目みたいです。……20円のもの……」
駄菓子屋さんの記憶をたどります。
駄菓子屋さんに最後に行ったのはいつだったでしょうか。今は値段も種類も変わっているかもしれませんね。私が買った当時の値段で大丈夫なんでしょうか?よくわかりませんが……分からないことだらけなので試してみるしかないんですよね。
あ、思い出しました。
「キャベツ五郎」
たしか20円じゃなかったですか?
……赤い米粒魔石が手の平に載っています。
20円は無理みたいです。
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