第43話 相談相手

男は少し驚いた顔をして、それから、何か考えるような素振りをした。


意図的にそうされたのかと思ったが、違うのか。


だとしたら、最近、色々あったから、そのせいかも知れない。


シユは、足を掴む手を払い除け、上半身を起こした。


「勃たない話、はもうよいのか?」

「よくない、けど」


一国を考える立場の人間にする話、でもない。


「相談する相手を間違えた」

「太医に診てもらうか?」


シユは、眉間に皺を寄せた。

「そういう意味じゃない」


立ち上がって、服を全部脱ぐ。そして、巨大な風呂の中へと飛び込んだ。


家主が長旅から帰る日は、いつでも入れるように湯が張られている。


たっぷりの湯は、やはり気持ちがいい。先程、薬草を入れたから、今夜は薬浴だ。


シユは、首から下を湯の中に沈めて、視線の先にいる人物を見つめる。


ギヨウは剣を置き、帯を外して、深衣を脱ぎ、下穿きだけになった。


そして、剣を掴み、湯の中へ入ると、手の届くところにそれを置いた。


こんなところにまで持ち込むのは、危険がそばにある、ということだ。


だが、態度は落ち着き払っていて、いつもと変わらない。


「あの子はどうなった?」

訊くと、男は、美しい顔を歪ませた。


「問題ない」

それ以上は、答えるつもりはないようだ。


「シャオウは?」

「元気だ」


行かないでと泣かれたが、置いて出た。その後すぐ、ゴ家に引き取られたのだ。


文を送っても返事がないし、ずっと気になっていた。元気なら良かった。

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