第41話 邪魔者
北の軍勢は、王都の城壁の外で、足止めを食っていた。
リコク率いる南軍が、鉄壁の守りで、侵攻を防いでいるからだ。
「メイユィ様、もう行きましょう。見るだけのはずです」
メイユィが輿の小窓から覗き見ているのは、老舗の薬屋だ。
先ほどから、店番をしている青年を観察している。
話をしてみたい。メイユィは、好奇心を抑え切れない。
向こうは、私を知っているのか?
目の前に現れたら、どんな顔をするのか?
息子を救ったのが、こんなにも若い薬師とは想像もしなかった。
そして、この子は孤児で、ギヨウ様が育てた、というのも驚きだ。
メイユィは輿を降りて、客がいなくなった店内へと入って行った。
青年の反応で、私が誰なのか分かっている、とメイユィは感じた。
意外と背が高い。雰囲気や服装は、今時の男の子、といった印象だ。
症状を伝えると、少し困った表情をし、それから、数日分の薬草を包んでくれた。
「ありがとう」
店の外へ出たら、もう、嘆き悲しむのはやめよう。
我が子は生き延び、名家の跡継ぎとして、大切に育てられるのだから。
夫人が出て行った後、シユはしばらく、立ち尽くしていた。
薬ならば、お抱えの医師に頼める。何をしに来たのだろう。
正妻にとって、自分は邪魔者でしかないはずだ。
何か、悪い言葉でも掛けられるかと思ったが、何も言われなかった。
シユは、帳簿に筆を走らせようとして、アッと声を上げた。
あまりにも緊張し過ぎて、名前を聞くのを忘れた。
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