第40話 焦らされる
二日間、シユは寝室から、ほとんど出ることなく過ごした。
貫かれたまま、一人きりで放置された時が、一番辛かった。
一人でいると、意識がそちらへ向くのか、異物感が強くなるのだ。
それなのに、最後の方は、抜き差しされるのが心地良いと感じるまでになった。
あれが本物だったら、どれほど気持ち良いことだろう。
子供を引き渡すため、ギヨウは王都を離れていて、屋敷はがらんとしている。
愛した女の子供はそばに置き、自分の子供は他所へやるのだ。
その体に流れる血を忌み嫌っているから、そうなるのは必然、か。
遠くで、微かに剣が交わる音がして、シユは起き上がった。
行ってみると、ジンロンが、顔を布で覆った男と対峙している。
ジンロンが斬りかかると、男はそれを華麗にかわして、反撃した。
この剣捌きは、紛れもなくテイカだ。ただ、ジンロンは知らないだろう。
ジンロンが押され気味であることは、シユの目にも分かった。
テイカは何をするつもりだ?
風に乗って、獣のような匂いが漂って来る。
ボロを纏い、粗末な草履を履いて、一見、物乞いのようにも見える。
自分の剣ではなく、安っぽい光を放つ、新しい剣を握っている。
応戦し切れず、ジンロンが剣を落とすと、テイカは剣を下ろした。
庭の木を登り、屋敷の高い塀を飛び越えて、あっという間に、姿を消す。
集まって来た屋敷の使用人たちに、ジンロンは言った。
「盗人が出たから、金目の物を盗まれていないか、確認しろ」
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