第33話 尊い犠牲

王府の東門の前に着くと、メイユィは、人目も憚らず、跪いた。


お越しいただけないのなら、こうするしかない。


「それにしても、ギヨウ様は冷たいです。子供を、もうゴ家にやるだなんて」


侍女の一人が言うと、他の侍女たちも話し始める。


「己の命は己で守れ、なんて言っても、幼い子には理解できませんよ」


「でも、こんなことして、あとでハクエイ様に叱られませんか?」


王家の子供は、成人まで生きられないことも多い。しかし、彼らはそれほど嘆かない。


継承権争いを生き抜いた、強者だけ残ればいい、と考える。


実母の立場からすると、到底、受け入れられない思想だ。


誰も、子供を守ってはくれない。もはや、誰も信じられない。


屋敷に常駐していた薬師もそうだ。もう助からぬと言って、早々に見放した。


ハクエイの元に急いで使者を送り、指示通り、皆を下がらせた。


ハクエイが連れて来た薬師は、自ら毒を試して、命懸けで救ってくれたという。


でも、それは間違いだったと、ハクエイは言うのだ。


我が子が助かったのに、間違い?


薬師は、人の命を救うのが仕事だ。ましてや我が子は、王家の血を引く特別な子。


代わりに命を落としたとて、それは。

そこで、メイユィは、ハッと考えを止めた。


門が、ゆっくりと開いていく。侍女たちが、息を呑むのが聞こえた。


中には、長身の男が立っていて、冷めた目で、こちらを見下ろしている。


こんなことしちゃって、怖いもの知らずもいいとこね。


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