第13話 告げ口

ドスン、バタン。大きな音がして、屋敷の使用人たちが集まって来た。


「テイカ殿。これは一体」

「誰も入れるな、との命令です」


最近、人払いをしている離れだが、猛獣でも飼っているのだろうか。


でも、ギヨウ様がいらっしゃるなら、心配要らないな。


皆、安堵して、門の前から、持ち場へと引き上げて行く。


シユだけが、二将軍の殴り合いを、呆然と見つめていた。


自室で謹慎を命じられて、不貞腐れていたら、オウエンがやって来た。


いつから居たのかと、シユは驚いたが、オウエンを信じ、最近の出来事を話した。


ギヨウの体調を心配している。そう、言ったからだ。


「抵抗をやめろ」

意外にも、力の差は明白だった。


「この体は今、どうなっている?」

大人しくなったギヨウの深衣を、オウエンが脱がせにかかる。


端正な顔は、苦しげに歪み、乱れた髪が、汗で纏わりついている。


他人が体に触れるのを許すなど、らしくない。本来なら、我慢ならないはずだ。


だが、左腕が使えないようで、なす術もないのだ。


顕になったギヨウの上半身を見て、シユは息を呑んだ。


創傷が無数に広がり、片腕は内出血していて、もはや人の肌の色ではない。


そして、背中には、まだ新しい杖刑の傷が、幾重にも刻まれている。


「この男を失いたくないのなら、早く手当てをしろ」


分かっていて、殴っていたのか?

シユは、オウエンを睨みつけた。


同時に、シユは、オウエンに話したことを、心底、後悔していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る