夜空の鳥

 深呼吸をすると、冷たい夜風が肺をたっぷりと満たす。身体が満たされてく感覚が心地よくて、ずっとこうしていたい。

 今夜は作戦を決行するには最適の夜だ。成功する姿は何度も想像してきた。「大丈夫」と何度も自分に言い聞かせる。両手に掲げたこの年季の入った麻のシーツは幼い時からの相棒。僕の涙も汗も、全部知っているから心強い。握りしめた拳にグッと力が入る。

 築200年煉瓦造りで建てられた修道院の最上階。ここが僕の部屋だ。昼間でも日当たりが悪く、薄暗い。この部屋に住むことが決まって初めての夜、これでもかという位に涙が溢れ出て、綺麗とは言えないこの白い布にくるまって眠りについたことを思い出した。

 10年前、わずかな荷物をトランクに詰めてここへやってきた。知らない土地で知らない人たちと暮らすことが、当時8歳の幼い自分にとっては寂しくて悲しくて、大きな絶望だった。

 ———あのまま普通に暮らすことが出来れば、どれほど良かっただろうか。

 あの日の夜と同じような月の光を浴びると、心の奥にぽっかりと穴が空いたように虚しくなる。


「よし、行こう」

 決意は固まった。星空を散りばめたような銀色の長い髪が、まるで返事をしたかのように頬を掠める。ひんやりとした窓の淵に足をかけると、その冷たさが全身に広がってく。目の前には暗く佇む森と、奥には月の光が照らす海が広がっていて、部屋の中から見える景色よりも開放的で圧倒されてしまう。

 心臓の音がありえないほどにうるさくて、頭の中を心音が埋め尽くす。それに抗うように、身体を思いきり重力に任せると、窓の外へ僕の全てが飛び出す。

 うなだれていたシーツはみるみる空気を含み、美しい弧を描きながらしっかりと支えてくれる。両腕には風の抵抗がかかり、今までに使ったことのないであろう筋肉が目覚めていく。潮の香りをほのかに纏った風に心地良く揺られていると、まるで夜空が全て自分のものになったようだ。

 鳥肌が立つ程に、この世界は広い。まだ見たことのない景色が五万とある。

———今夜何かが変われば良い、少しでも今の現状を変える手立てとなれば。そう願いながら、この空を飛ぶ。


 着地点は決めている。冷たく鎮座する灰色の塀の向こう側。それを越えないと全てが無駄になる。視界の端にぼんやりと小さな2つの灯火が映ると、その瞬間ごくりと唾をのみ込む。

 焦ってはダメだ、監視員に見つかることも想定済み。着地点変更のために右手に思いきり力を込めると、重心が傾き旋回を始める。心臓の音がだんだん大きくなり、その音が焦りを一層駆り立てる。

 2つの炎に向けていた視線を夜空へと軌道修正すると、その瞬間に無数の黒い影に包まれた。ギャアギャアと耳障りな鳴き声が鼓膜に響く。

「ああ、終わった……」

———野鳥の群れは想定していた中でも、最悪の事態だった。冷たい嘴や無造作に動く翼が不快なほどにぶつかり合い、僕の頼りない白い翼は簡単に切り裂かれて失墜していく。

 もうどうにでもなれという投げやりな気分で、反射的にまぶたを強く閉じる。数秒前まで自由に伸び切っていた腕や足はあっという間に丸まり、胴体は鉛のように重く感じた。初めて感じる猛烈な風の圧に意識が遠のいていく。


 ドスンッ。


 鈍い音が全身に響き渡る。一瞬目の前が暗転し、自分が生きているのか死んでいるのかも分からなかった。徐々に光を取り戻していく視界に、二つの人影が現れた。

「団長、生きてそうです……!」

「そうか、良かった。怪我があれば治療をしよう」

 彼らの言葉を聞いて「生きているんだ」と自覚を持つことが出来た。

「それにしてもものすごく綺麗な娘ですねー。てっきり天使が落ちてきたのかと思いましたよ」

 静かに澄み渡った夜に似つかわしくない、明るくひょうきんな口調の男が僕の顔を覗き込んでくる。

「そうだな。本当に美しい」

 団長と呼ばれたもう1人の大柄な男は、そう言いながら温かい手で僕の顔を包み込む。誰かに触れられたのはいつぶりだろうか。随分と懐かしい感覚だ。冷たい風に当てられた僕の皮膚を溶かしていくかのように、温もりが伝わってくる。強張っていた体の力が抜けていくのが自分でも分かった。そしてその温かさに張り詰めていた線が緩み、深い眠りへと落ちていった。


 ———どこまでも青く澄んだ海岸。晴れた日には空との境界が分からなくなるほどだ。どこへ続いているのかもわからない地平線を眺めるのが好きで、静かな波音を聴きながら、よく1人で海辺を散歩していた。この広大な海原の向こうにも、同じように生活をしている人がいる。そう思うと胸が高鳴った。

 幼き日の僕は、会ったこともない人に思いを巡らせては、その向こう側に行ってみたいという大きな希望に満ち溢れていた。空を自由に飛び回るカモメは憧れの存在で、よく真似をして飛ぶ真似をしていた。

 遠くで春風のように柔らかな声が聞こえてくる。僕を呼ぶ声の方向を振り返ると、黄金に輝く麦畑とその奥には赤い屋根の木造づくりの一軒家がある。これは僕が幼少期を過ごした家だ。

「ルネー!ご飯できたわよ。帰っていらっしゃい」

 大好きな母が声を張って呼んでいる。母さんはこの町で一番の美人だ。少なくとも僕が知る限りは。銀色に輝く長い髪と、透き通るような色素の薄い肌。母さんを見た人は「まるで谷に咲く百合のようだ」と口を揃えて言っていた。みんなは彼女のことを芸術品のように扱うけれど、僕たち家族だけは違っていた。大きな瞳を思いきり細めて、クシャクシャにしてみせる満面の笑顔が母の本当の姿だ。よく笑い、怒り、泣き……。母の顔を1日中でも見ていられるほど、彼女の表情はめまぐるしく変化して飽きなかった。

 僕は「はーい」と元気よく返事をして、麦畑を横切って家に向かって走る。食卓に着くと僕以外の家族は、みんな座って食べる準備をしていた。

 兄さんは6つ歳が離れているけど、僕の一番の理解者だった。テストの成績も運動も誰よりも優れていて完璧な人。すごく優しくて色んなことを教えてくれた。

「ルネ、今日はトマトのスープパスタだ。やったな」と軽快な口調で笑顔を見せた。兄さんは母特製の豆入りのトマトスープが大好きで、よく褒めちぎっていた。男同士のくだらない会話も兄さんとすると、全てが楽しかった。

 「ほらポール、落ち着きなさい。いただきますをしよう」と柔らかな口調で悟す父さん。快活な兄に対して、柔和な雰囲気が父にはあった。父さんは学校で生物学の先生をしながら、農作業を営んでいた。物静かに作業をする父の背中は、とても大きくて憧れていた。読書が趣味で毎晩僕を膝の上に乗せて本を読んでくれては、その本の感想を男同士で熱く討論した。父さんはまるで自身が本棚のような底なしの知識の持ち主で、近所の住人の悩みもすぐに解決してしまう自慢の家族だった。

「そうだ、ルネ。明日は勉強会だよ。ハルくんも連れておいで」と向かいに座る父が僕に語りかける。

「やった!もちろんハルも連れていくよ」

 即座に返事をすると、早く明日にならないかなと胸は高揚感に包まれる。

 父は週末に近くに住む子どもたちや若者を集めて勉強会を開いており、僕はその勉強会が、学校に行くことよりも好きだった。なぜならそこで僕にはたくさんの友達が出来た。世界中を旅するダンサーや5ヶ国語を話すことが出来る料理人、自らを実験台にしている薬売りなど、学校では会うことが出来ないような人とたくさん出会うことが出来たのだ。

 中でも一番よく遊んでいた少年がいて、ハルという名前の、貧しい家の一人息子。僕よりもいくつか年下で、体も一回り小さく、よく転んではボロボロと大きな涙を流して僕の背中に隠れて泣いていた。どうしても泣き止まない時は、彼のふわふわした柔らかいくせっ毛を撫でると、安心したみたいでゆっくりと涙が止まっていく様子が可愛かった。

「ルネ、ありがとう」

「どういたしまして」

「僕、ルネみたいに強くなりたい」

「ああ、きっとなれるよ」

 子犬のような濡れた大きな瞳を煌めかせながら僕に追いつこうと頑張っている姿は、弟ができたみたいで心底嬉しかったことを覚えている。

これが僕の大好きな家族や友人、大好きな時間の記憶。

 ———あの暗い雨の日、全てが奪われるまでは。


 揺らめく焚き火が、朦朧とした視界にぼやけて映る。しっかりとした意識を取り戻すまでは時間がかかったが、何度か瞬きをすると懐かしい記憶の断片たちが夢だったことを悟り、少し寂しくなる。

 部屋の正面には、気を失う前にみたひょうきんな顔の男が、耳障りないびきをかきながら眠っている。

「うるさい」ぼそりと呟くと、完全に目が覚めていることを実感した。

 最悪だ。こんな騒音じゃ寝ることが出来ないので、自分のところに掛かっていたタオルを男の顔に掛かるように投げてやった。彼は「フゴッ」と変な音を立てて、一瞬だけ部屋に静寂が訪れたが、すぐにいびきは命を吹き返した。しぶとい生命力に、眉間にシワが寄る。諦めて部屋を見渡すと木造のさほど大きくはない小屋で、角には物騒な武器や甲冑などが置いてある。

———彼らは監視員ではなく、騎士団員だったか。

 この国の騎士は神に仕える英雄として神聖化されていて、崇められている。そしてこの修道院は王立なので騎士団とも結びつきが強く、表向きには護られているという立場だ。修道女の中には騎士と駆け落ちした人もいるのだとか。確かに騎士はカッコいい。強くて、勇ましさに憧れる。昔、自由に剣術の稽古をしていた時は騎士団に入ることが夢だったことをふと思い出した。

 武具を眺めながら心地よく微睡んでいると、ガチャリと鈍い音を立ててドアが開いた。ワンピースの外に出ていた足を反射的にしまい込み、両手に力が入る。

「目が覚めた?」そう言った大柄の男が室内へ入ってくる。

 程よくついた筋肉と健康的に焼けた肌。彫刻のような端正な骨格の中にも、甘い色気があった。この顔立ちはかなり女にウケが良いだろう。物音を立てずに近づく所作はスマートで惚れ惚れするほど色っぽい。

「あ……はい」

 あんた達が現れなければ上手くいったかもしれないのに。刺々しい言葉が口元まで出そうだったが、余計なことまで口走ってしまう予感がしたので、柄にもなく取り繕って早々に口を閉じた。

「怪我はないか」

 心配そうな顔をむけられて、こちらへゆっくりと近付いて来たので、それを遮って「帰ります」と温度の無い声で告げて立ち上がる。


バチンッ。

 足首にまるで電流のような痛みが走った。身体の中の重心を失い、床に倒れ込んでしまう。すると太く逞しい腕が、素早く伸びてきて僕の全てを包み込んだ。

 ずっと硬い表情だった男は、少し口角が上がり温かい表情になっていた。

「ゆっくりでいいから。……今晩はここに泊まった方がいい」

「———ッ」

 体重の全てを彼に委ねて動けなくなっている手前、悔しいけれど素直に従うしかなくなってしまった。再びベッドに連れ戻されると、自分の生ぬるい温もりがまだ残っている。眠りにつこうと試みるも、頭が冴えわたってしまい、全く眠ることができなかった。

 他人の存在を感じると眠りにつくことができない。これは昔からの癖で、物心ついた時には母親にも部屋から出て行ってもらっていたほどだ。

 眠ることを半ば諦めて、うっすらと目を開けると、彼の鋭い瞳と視線が交わり、変に逸らせなくて眼球が泳いでいるのが自分でもわかった。

 机の上には半分に量が減ったボトルが置いてあり、焚き火の炎が反射して、影すらも揺れている。リラックスした様子で座っている彼は、グラスを片手に一人ブランデーを愉しんでいた。

「眠れない?」

 彼の問いに対して深く頷く。気まずくなりグラスの中で波打つ酒を見つめる。

「君も呑む?」

「いや、いらない」

 炎の熱とは対照的に、冷めきった会話しか続けられない。沈黙の中を火の音がカチカチと小さく音を立てては消える。

「……寝ないの?」

「ああ。少しは横になるけど、あんまり深く寝ることが出来なくて。このブランデーは睡眠薬みたいなものなんだ」目尻を下げて苦笑う姿は少し切なそうだった。

 こんなに良い男を世の女はほっとかないだろう。毎晩のように誘いのひとつやふたつ、来るだろうに。しかも世間体が良い騎士団員ならなおさら結婚の申し込みも後を立たないだろう。

 彼の意外な一面を知って、それを取り繕うように、無意識に「ふうん」と相槌を打ってしまう。

 初対面で早くも冷たい印象を持たれたかもしれないけど、知ったことではない。どうせ今晩で終わる関係なのだ。

「ルネって冷たいんだよね」と言った友人の何気ない一言が、心に突き刺さっていまだに抜けずにいる。

 僕は周囲の人間から言わせるとかなり淡白な人間らしく、他人には興味ないし、逆に自分に対して興味を持たれても心底気持ち悪くて困ってしまう。媚を売り買いしても、自分が変わったわけじゃない。世の中にそんな人間がいても良いじゃないか、というのが持論だ。まあそのせいで変なあだ名まで付けられたが……。

 モヤモヤとした気分を振り切るように寝返りを打って、目を合わせないようにしてみる。最初からこうしておけば良かったと景色が変わってから思った。


「ヒューヒュー」

 風が吹くような音が自分の中からしていることに気づく。

 明らかに呼吸が細くなってくる。完全に油断していた。胸がじわじわと圧迫されるような柔い痛みと共に、焦りが込み上げてくる。おさまれ、おさまれ、おさまれ……。胸の前で拳を握り締めて祈る。

 そう心で念じれば念じるほど、意識はか細い息に集中してしまう。ドンドンという心臓の鼓動が地響きのように脳に響く。ダメだ、ダメだ、ダメだ……。

 初めて会った人を困らせるんじゃない、そう考えれば考えるほどに呼吸が速くなり、上手く息が吸えなくなってくる。

 ぐらぐらした頭の中で意識を手放すと、世界が真っ暗になった。自分の心にぽっかりと大きな黒い空洞ができたみたいだ。そこには誰も入ってくることができない。聞こえるのは、頭上を行き交う黒い雲と荒れた風。このままじっと嵐が収まるのを静かに待つしか、方法が無いことを経験上知っている。


 すると荒々しく呼吸をするだけだった唇に、強い圧が加わり、意識を取り戻す。閉じていた目をゆっくりと開けると、先ほどの美しい男が僕の上半身を包み込み、唇を重ねていた。

「なっ……!———んっ…………んんっ」

「大丈夫、私だけ見てて」

 心の奥底でも読まれたかのように、彼の瞳は狩人の如く僕を捕まえて離さない。きついブランデーと煙草の匂いの生々しさで脳がぐらつき、ますます混乱が加速していくのがわかる。

 掴まれていた腕からは、同じ人間とは思えないほどの熱が伝わってきて、そこから全身が火照っていくのがわかる。

 彼の高い鼻筋が何度も当たっては離れを繰り返した後、厚い舌の侵入を拒むと同時に彼の大きな体を思い切り突き放していた。

 他人に触れられるのは嫌いなのに。ましてやキスなんて。

「ありえない、ありえない、ありえない」

 心の奥底から込み上げてくる苛立ちに耐え切ることが出来なかった。

 隅に追いやられていた薄いシーツを1枚だけ手に取ってベッドから出ると、わき目もふれずに小屋から飛び出した。ずっと火の近くにいたので、外の温度がこんなに寒かったことに気づかなかった。

 ふと空を見上げると、おびただしい数の星がまるで自分をめがけて降ってくるかのようで、身震いが止まらなくなる。彼に触れていた唇や腕がまだ熱い。その跡を確かめるように、手で何度もなぞった。最悪なファーストキスだ。


 急いで階段を駆け上がり、住み慣れた部屋に戻る。

 誰にも見つからなくて幸いだった。この部屋は建物の一番上に位置していて、螺旋階段の石畳は無慈悲にも冷たく、足の裏は傷ついて少し血が出ている。裸足で歩くのはもうごめんだ。

 棚の上に置かれた鏡が反射して、自分の姿を映し出す。母によく似た顔立ちだと昔から周囲に言われていた。腰につく位に伸びた滑らかな髪や透きとおる琥珀色の瞳、華奢な体つきもよく似ていた。母さんの顔を忘れたら鏡を見れば解決したものだ。

 しかし、今映っている自分は、髪もボサボサで随分とくたびれた様子だ。立てかけていた鏡を手にとって、自分からは見えなくなるように倒すと、そのままベッドへ向かう。気だるい気持ちに反応するかのように、古びたベッドは音を鳴らしながら僕の身体を受け止めた。


 まぶたを閉じると「ルネ、あなたは今日から修道女として生きるのよ」という院長の声が、ふと頭に中に蘇った。

 初めて修道院へ来た日に幼い僕の手を握りながら、彼女は慈愛に満ちた声で言うのだった。その優しい声に矛盾して、自分の中の一部を取り除かれるような残酷さがその言葉にはあったことを強烈に覚えている。その言葉を受け取めきれなかった僕の心は、まるで端から凍っていくかのようにみるみる冷たく固まったようだった。この時から僕は不安になると訪れる暗い気持ちのことを、氷の結晶だと思って自分自身と接してきた。

 一人で呆然と立ちすくす僕に向けられた彼女の視線は、親愛でもなければ同情でもなかったことは、子どもながらにも理解した。

 ただそれは彼女の仕事であり、生き方であったのだ。人生の長い時間を規律や清らかさを神に捧げ、祈ること。外見こそ綺麗な白髪で、背中が緩やかに曲がっている院長であったが、その佇まいは凛としていてまさに“美しかった”。

 今になっては院長のこの言葉がなければ、ここで生きていく『諦め』というものがつかなかったかもしれない。その点は院長に感謝をしている。しかし歳を重ねるごとに、この『諦め』を諦めたくは無いという自分が、心の半分くらいを占めていった。

 ここを出て、いつか自由になろう。そして母さんにもう一度会うんだ。この部屋から見える景色が毎日変わらないこととは裏腹に、その思いは強くなっている。何か少しでも現状を変えたかった。その第一歩が今日だった。

 でもあっという間に失敗した。ちりのように積もった小さな希望を吹き消されたように。失敗を目の前にすると、何度も挑戦しようという気持ちは案外すぐには湧かないものだと知ることが出来た。

 ———ぼんやりと天井を見上げていると、呼吸が元に戻っていたことにようやく気づく。窓の表面はまだひんやりとしていそうだけれど、空の色は少しずつ透明度が高くなり、木々たちが目覚め始めたのがわかった。


夜が明ける。







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