聖なる雪解けは百夜のあとに

本家本素

あらすじ

 王立修道院で憂鬱な日々を過ごしているルネ。彼は男であることを隠し、友人のミランダとエマに助けられながら修道女として生活をしている。氷の聖母マリアと呼ばれるほどに母譲りの美しい風貌に恵まれてはいるが、自由のない毎日に心の奥底は氷の結晶のように冷たく凍っているようだった。

 10年前、父と兄が異端研究をしているという疑いをかけられ国に捕まったことを機に、幸せだったはずの家族はバラバラになり、大好きな母もこのことをきっかけに行方不明になっててしまう。

 母ともう一度会いたいという想いを胸に修道院からの脱走を試みるが、あえなく失敗。この時、助けてくれたのが王立騎士団の騎士の青年ハロルドだった。ルネは色男のハロルドに翻弄されながら、過呼吸の治療として彼と最悪なファーストキスを味わうことになる。

 その翌日、半ば強引に新団長の任命式で大役を任される。そしてそれを任命したのは新団長として選ばれたハロルドだった。

 任命式の後、体調不良を訴えて医務室に行くと医師のリチャードが、百夜通いの存在をハロルドに教える。彼は即座にルネに求愛するため挑戦者となり、修道院中の注目の的となる。

 ルネは無視することを決め込んでいたが、ハロルドの誠実さに次第に惹かれていく。そんな中、雨で暴水している河にハロルドが流されたとの情報が入り、もっと彼のことを知っておけば良かったと後悔するルネ。なんとか助かったハロルドのために涙を流す。

 ハロルドは怪我の療養のためにしばらく修道院で過ごすことになる。騎士仲間のジャンも加えて過ごした時間はルネにとって楽しい時間になった。

 ある日、「花冠祭」に向けてアルベルト司教の庭へ訪問することになる。そこで食べた可愛らしいマフィン。そのお菓子に使われていたのは懐かしい味のジャム。ルネは直感的に母の手作りだと気づく。

 そのマフィンを販売している菓子店を聞きだし、花冠祭当日にそこへひとりで向かうことを決める。道中でハロルドに助けてもらいながら母の元へ辿り着くと、母には新しい家庭があること、さらにハロルドは昔可愛がっていた年下の幼馴染だと発覚してルネは混乱する。母の家を飛び出して故郷へ帰ると、母の秘めたる過去が綴られたメモを見てさらに取り乱すが、ハロルドの深い愛情を知り、ルネは一歩前へ前進しようと決心する。母の家や修道院へ戻るときちんと本当の自分の姿や、思いを伝える。

 修道院を出ていくことにしたルネに、ハロルドは騎士団入団試験を受けることを薦める。友人であるミランダやエマ、そして院長の思惑も交錯しながら、ルネは自分の未来を考える。そしてハロルドと2人で生きていける道を模索するという物語。


 

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