島の観光業を再起させんと、トロピカル因習アイランド作りに奔走する、祖父と孫のお話。
コミカルな掛け合いが楽しい現代ものの掌編です。
掛け合いの雰囲気といい、また「トロピカル因習アイランド」というコミカルな内容といい、コメディらしい明るさが魅力の物語。
しかしその実、お話そのものは存外に真っ当というか、ちゃんとした島おこしをやっているところが特徴的です。
なにしろ設定の膨大さと細やかさがもう途轍もない!
舞台となる島やその歴史、それに登場人物たちの背景の圧倒的な情報量。しかもそのどれもがとても生々しく生き生きしていて、展開に強力な説得力を産んでいるところが楽しいです。
やってることは本当にトロピカル因習アイランドなのに……!
もちろん、その設定がただの設定に終わらず、しっかり物語に作用しているところが最大の魅力。
また、訪れた観光客が変わった因習に巻き込まれるのでなく、自らそれを作る側の物語なのも独特なところです。
設定に分厚い読み応えを感じる、とても迫力のある物語でした。