第30話
「え、え!?」
シルフは俺の言葉を聞いて驚いている。
「そ、そんな…お父様が許してくれませんし…。それに、アルス様は婚約者がいるでしょう…?こういうのは良くないと思います!」
「いや、最近私たちの仲が冷えてきていてね…。悲しいことに…。でも、そうだね。私が間違っていたよ!だからさ、たまに相談に乗って貰えないかな?」
「そ、そうですね。それでしたら…私もサポートします!それがお礼になるなら!」
リリアも聖夜後に捨てて、殺せばいいか。そして、この娘のお父さんは過保護だけど、適当に汚職か悪い噂でもでっち上げて遠くに隠居させるか。
あぁ、戦争を起こして殺してしまうのもいいな。なんなら、シルフもそこで殺してしまえそうだし。時が来て、臨機応変に…かな。
「話は変わるけど、シルフのお父様はあなたをとても溺愛しているようで?」
「あ、はい。お恥ずかしながら、私のためなら戦争まで起こそうとしてしまうくらいですよ…。」
「それは…、公爵家の当主らしくはないが、良い父上だね。」
本当に良い父上だな。今、この娘を他国に売り飛ばしてみるか…?目玉くり抜いて売る?さすがに足がつくな…。
「こんなところで話していてはお身体に悪いですね。表へ出たいところですが、今は服がボロボロで私の上着を羽織っている状態ですからね…。表へ行くのはまずいですよね。」
「あ、そうですね。」
うーん、どうしようか。ここで一緒に待機しているのが無難か。
「ふふっ」
「?、どうしました?」
「いえ、すみません。考え事の途中でしたのに…。私の精霊さんがアルス様の顔をポコポコポコポコと叩いていらしたので、つい。こら、やめてくださいね?」
物理的なダメージはない…。魔法にのみ攻撃力が存在するのか。精霊は心の綺麗なものにしか近寄らないというから、俺の心は綺麗ということか。
「あ、あー、あー。この子達いつもより元気…というか攻撃力的ですね…」
「仲良くしてください。精霊様方。」
お前らはいつか俺のために動くようになるんだ。大人しくしとけば殺さないようにはしてやるよ。
「お、やっと離れました。すみません、アルス様。」
そんなことをしていれば、何やら足音が聞こえてくる。シルフの護衛だな。
「護衛の方が近いようです。それでは、私はもう行きますね。上着はそのままで大丈夫です。またあった時にでも。」
「あ、え、えーと、助けていただきありがとうございました。」
◆
「あーアルス遅いよー!」
「ごめんごめん、遅くなった。」
俺はノア達の元へ戻ってきた。ノアとアイシャは順当に仲良くなれ、レイカもひとつ区切りをつけたような顔をしている。
「アルス様…ありがとうございました…」
「あぁ、大丈夫だよ。」
そして、レイカはノアとアイシャの間に入るように走り込む。一件落着、一件落着、ハッピーエンドというわけで…
「アールスしゃま〜!!」
ちっ、やっぱりいやがった…。
「リ、リリア!?びっくりしたよ。まさかいるとはね。」
「すぅ〜、やっと見つけました〜!」
「さっき離れたばっかりのはずなんだけどな…」
と、ノアとアイシャは驚いている。リリアの綺麗な髪を撫でてあげる。
「リリア…そのサングラスも似合っているよ。少しヒビが入ってしまっているから変えた方がいいけど…。」
「それじゃあ、アルス!買いに行きましょ♪」
「というわけだから、ノア…ここら辺でお別れだ。今日はありがとう。」
「う、うん…。大変だね。さようなら。あとごめん。例の件言っちゃった。」
あぁ、あの件か…。言って欲しかったくらいだからいいんだが、リリアの反応は見たかったものだな。
「まぁ、いいさ。俺はリリアが良ければそれでいい。」
「ふふん」
俺は思ってもいないことを言って、リリアと共に街中へと消えていく。
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