第29話

 side.ノア


 僕とアイシャさんはレイカさんとアルスに置いていかれて二人きりになってしまった。


「二人ともなんだか用事みたいです。」


「そうですか…。じゃあ、カフェにでも入りますか?」


「そうですね。行きましょう。」


 僕たちは近くのカフェに向かおうとしばらく歩いたところで、見知ったクラスメイトの姿を見つける。


「リ、リリアさん?」


「あ!こ、こんにちは。アイシャ様にノア様……」


 リリアさんは変装のつもりなのかつけ慣れないサングラスをつけている。


「リリア様は何をなされているのですか?」


「え、えーと、アルス様を見失って……」


「僕たちのことをつけていたんですか?」


 僕がそういえば、困ったように、


「アルス様が部屋にいなくて…、それで街に降りたら、レイカ様が離れた後に、アルス様が離れる姿を見たから、つい……つけてきた訳ではないです…。見失って、一周してきちゃいました…。」


「あ、あ〜、そうですか。」


「アルス様がどこかに行ってしまうのが怖いんです!今もどこかで女性の方といるかもしれないと思うと!アルス様のことは信じてますけど、周りの女共が!」


 うわうわうわ、ヒートアップしてる。初めて見たかもしれないな…。いつもアルスといる時は落ち着いていたのか…。


「まぁ、大丈夫ですよ。リリアさん。あの二人は別の用事っぽいですし。それに、アルスはあなたのことをとても大事にしているよ。」


「ふふん。そうですよね!」


「ここで言っちゃおうかな…」


 周りに人がいないか確認する。もちろん街中なので人はいるが、風魔法で周りに声が聞こえないように工夫する。


「実は、アルスからは依頼を受けていてね。君の元婚約者の死に対する調査です。一応、君自身の口からも聞いておきたいけど、大丈夫かな?」


「え?でも、あれは事故だって…?」


「この世界にはもしかしたらが存在する。そして、殺す理由があれば事件の可能性は高い。」


 リリアさんは目を見開く。


「私は……あの人のことはもう切り替えています。それに、私は今幸せで、アルス様さえいればもう大丈夫なんです。」


「あ、それなら…」


「ですけど…」


 リリアさんの目から光が消える。それは目の色が変わってしまったかのように錯覚を覚えるだろう。


 ゾクゾクゾク


「もし、犯人がいて、事故ではなく事件なら…」




 




「喉を裂く目を潰す頭に穴を開ける指を折る爪を剥がす腕に刺す肩を切り落とす臓器を潰す骨をすり潰す胸に風穴を開ける太ももを滅多刺す尻から串ざす足を落とす毒で溶かす燃やす苦しめる…苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて私の手で殺す……」


 心が苦しくなるほどの憎悪、そして目が痛くなるほどの魔力放出…。


 アイシャさんの様子を見ても顔を青くしている。


「う、う…ん。分かったよ。任してください…。今のところ分かっていることは、事件であれば、貴族の可能性が高く、事件が何年も前のことであるため詳しくは分からないが、女性が制作した魔道具だろうか…。魔道具なんて店でも売ってるし分からないけどね。」


「だったら、この国、いや、この世界全ての…アルス様以外の貴族を全員……。いえ、王女様の前でする話ではありませんね。失礼しました。」


 アルスのことは心配しなくていいよ〜、と伝えるつもりが想像の何倍もやばい事になったな。


「もし、そんなゴミ野郎がいれば…、いや居なければ、あの人と私とアルス様で良い友人関係になれたのに…」


 リリアさんは僕に向き直る。


「それでは、ノア様。よろしくお願いしますね。」


 丁寧で上品な礼のあとにリリアさんは僕たちの元から去っていった。


 ごめん!アルス、面倒なことにしたかも!!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アルスは恐らくこの状況を知れば大喜びしますね。


あぁ、あと以前、キャラのステータスシートを公開してしまったんですが、あれは普通にミスなので消しました。見てしまった11人の方々は記憶弄っといてください。しばらくしたらまた出します。

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