第28話
昼くらいに集合してまあまあの時間が経ったが、まだ外は明るいと言っていい時間だろう。
俺は今、ゆっくりと音の聞こえた方へと向かっている。平民とかのくだらない存在なら無視するが、この世界にイレギュラーを起こしてくれる大きな貴族様であれば介入しよう。
歩いて数分。路地裏にたどり着く。物陰から様子を伺う。
そこに居たのは、いかにも賊っぽい風貌の男性と上品な格好をした女性だ。上品な格好をしているといっても今は服を破られ男性に迫られているところだ。
「貴族か…」
ふーむ、あれは確かフォレスト侯爵家の令嬢。
婚約者を探していた時に、良さげな貴族については調べてある。
フォレスト侯爵家…。経済力が豊かで軍事力もなかなかのものだ。現当主は娘を溺愛しているとも聞く。
(よし、助けるか。)
◆
side.?
「ははは、嬢ちゃん、少し味見させてくれな…?高く売れそうな商品だがちょっとくらいな。」
「い、嫌です。やめてください。た、助けて…」
こ、こんな人に汚されるなんて…
私は護衛と離れてしまい、その時に襲われてしまいました。どうにかして逃げていましたが、もうダメみたいです…。
今、まさに私の衣装をビリビリに破き、地面に倒され、股を開かせようとしてくる。私は手で必死に抵抗するが、男の力には抗えない。
「あ、あぁ…、やめて…」
しかし、瞬間、骨がボキッっと折れるような音と共に男は私の目の前から姿を消した。
◆
「無事ですか?お嬢さん?」
俺は男を蹴り飛ばす。首を跳ねても良かったが流血によって、この女に怖がられるのもまずいからな。
俺が蹴飛ばした男は息をしているが身体は全く動かせないでいる。
優しい俺は女に上着を被せてあげる。
「あ、あの、ありがとうございます…」
今は少しボサボサになっているが、普段はしっかり手入れのされているであろう銀髪の長髪、さすがとしか言えないようなスタイルにこれまでに見たことがないほど綺麗な虹色の眼。
さっきまで怯えて光を失っていた眼は今では輝いたような眼で俺を見ている。
「お……私はオルレアン伯爵家長子アルス・フォン・オルレアンと申します。無事ではないかもしれませんが、一線は越えていないようで安心しました。」
「私はシルフ・フォン・フォレストと申します。た、助けていただきありがとうございました。」
俺の上着で身体を隠し、丁寧にお礼をしてくる。けれど、ほっとしたのかまた涙を流し始める。
「ありがとう、ございます…怖かった…怖かったです…。」
「あぁ、大丈夫だ。もう大丈夫だ。これでも使ってください。」
シルフは落ち着くと、
「す、すみません。お見苦しいところを…」
「大丈夫ですよ。それにしても、フォレスト侯爵家の御令嬢だったのですね。暗くて、よく分かりませんでした。誰であろうと助けるつもりでしたが、あなたのような方になにも無くて良かったです。」
それにしても、なんだろうこの眼は…?魔眼の系統か…?
「シルフ様、とても綺麗な眼ですね。」
「あ、はい。『精霊眼』といって、妖精さん…?精霊さん…?が見えて、仲良くなると精霊術というものが使えたり、魔法のお手伝いをしてくれるんですよ。」
「そうゆうのは勝手に教えて良いのですか?」
「あ!ダメです、けどアルス様にならいいかなって…。助けてもらってうっかりしてました…。誰にも言わないでくださいね!お父様に怒られちゃいます…。」
精霊眼…。他人に移植したりもできるんだろうか…?遺伝するならばこいつを孕ませて赤ん坊から目玉をほじくれば…。
「その精霊眼というのは遺伝するのですか?」
「私が家系のこれまでの歴史で二人目なので、遺伝するといえばすると思いますが…、とても貴重だと思います…。」
なら、これを手に入れるには、直接か…。
「婚約者はいるのですか?」
「い、いえ、お恥ずかしながらまだ…お父様が過保護で…。」
今ここで奪うか…?いや、ダメだ。ノアもレイカもこの街にいる。魔眼をとった時に魔力放出が起きるかもしれない…。
うん、まだいいか。
俺はシルフの肩に手を置き近づく。そして、目線をを合わせ…
「…シルフ、君が欲しい…。」
「………え!?んぇ!?」
シルフ、君が欲しい…。
――君の『眼』が欲しい――
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主人公強化イベントの序章みたいなものです。
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