第27話
ノア達との外出の日。
「あぁ〜めんどー。」
待ち合わせは昼前だ。俺は良識を持った日本人だ。待ち合わせに遅れることはしない。5分前に着くようにはする。
街で遊ぶといっても、暗くなるまでには解散することになるだろう。
「さて、行くか。」
腐っても貴族だ。変装は面倒なので、一応認識阻害のメガネをかけておく。俺が対象としているもの以外からは少しモヤがかかる。
それと、王女と一緒で面倒が起きるかもしれない。聴力と視力に関しては常に強化をかけておくとしよう。
◆
待ち合わせ場所に着いたわたくしアルスくん。一番乗りの模様…
(意外とゆっくりめなんだな。……何時間も前に到着しているリリアが異常なのか。)
少しの時間ぼーっとしていると、アイシャが現れる。
「あら、まだアルス様だけですか。」
「こんにちは、アイシャさん。ノアとレイカさんももうすぐ来ると思うよ。」
アイシャの服装は王女だから、少し派手なのを想像していたが、シンプルな格好にロングスカートだ。
「アイシャさん、ノアと仲良くなったんですね。」
「え、えぇ。仲良くなったのかどうかはまだ微妙なところですが…。ところでなんですが、アルス様は勉学も実技も優秀ですが、なにか秘密はあるのですか?」
「うーん、俺か…。相手を観察することかな。相手の弱点を見抜き、優位に物事を運べる。」
「なるほど…。授業の時にレイカ様とアルス様には力量差があるように見えましたがそうゆうところで善戦していたんですね。」
そうこう話していると、ノアとレイカもすぐに合流した。
「ごめん、アイシャさんとアルス。待たせたかな?」
「こんにちは。アイシャ様、アルス様。」
実際、そんなに待っていないので、俺は愛想良く返す。
「そんで、ノア。どこに行くんだ?」
「ええと、食べ歩きでもしながら、買い物でもしようかなって思ってるよ。アイシャさんの気分転換にでもなればいいと思ってね。」
それから俺たちはそれなりの量のものをちょくちょく食べながら、服屋やアクセサリーなどの店を回り平和に過ごした。
途中、ちらちらと周りが見てくる。レイカもアイシャも相当の美人であり、アイシャに至っては王女様だ。変装もしていない。
そして、周りに気をやれば、王女の護衛だろうか…?俺たちをずっと監視している目もある。
「ノアさん、こんな風に歩きながら食べたり、服を自分で選んだりする経験は初めてです。」
「それは良かったです。楽しいですか?」
「はい、とっても!」
ノアとアイシャは喋りながら、「そっちの味も美味しそうですね!」とか言いながら食べあいっこしている。 アイシャが純粋に楽しんで、ノアが恥ずかしながら付き合う形をずっとしている。
「なぁ、レイカさん。いいのか…?」
「…はい。大丈夫…です。今日はアイシャ様のために集まったのですから、楽しんでもらえれば。」
「ふーん、で、どうした?今日はいつもより元気ないけど。」
「いえ、別に。」
何で悩んでるから知ってるけどな。別に平民のガキ一人死んだくらいでそんなに悩まくていいのにな。
「まぁ、なにかノアに対して隠し事があって、それが心残りなら気にすんな。」
「え?」
「みんな隠し事はある。ノアは関係ない。自分のことは自分で区切りつけて前へ進めばいいさ。自分はできることをやったんだってな。」
「……少し離れます。しばらくしたら戻るので…。」
レイカは駆け足で離れていく。おそらく、教会かお墓にでも行ったのだろう。
「レイカさん、なにか用事を思い出したらしいから、少し離れるってよ。」
「え?そうなんだ。分かったよ。しばらくは三人で回ろうか。」
その時、俺の耳が遠くから小さな音を拾う。
(ん?女の声か…?)
「んー、俺も少し離れるよ。二人きりのデートを楽しめよ。王女様とイチャイチャできる機会なんてそうそうないからな!」
「私はそんなすごい人ではないですよ…?それに、ノア様が私なんかと…」
「いやいやいや、僕の方が申し訳ないよ!僕よりとっても強くてすごいし、美人で可愛いですし!」
恥ずかしそうにしている二人を置いて、声の方へと向かう。
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