第26話

 事件後、俺は寮の部屋で目を覚ます。


「あぁー、身体痛てぇ。」


 昨日は一日、レイカから逃げ回ったせいでものすごく身体痛い。レイカに対して常に全力だったしなぁ。


「今日はサボろうかな。」


 これで、二人目…


 あとは王女のアイシャだけだな。アイシャの方からノアに関わることも多いから放っておいても仲良くはなるか…


 そんなこんな考えていると、


 ――コンコンコン


 と部屋の扉がノックされる。


「アルス様ー、大丈夫ですか?」


「リリアか…、どうかした?」


「まだ、アルス様が学院に来ていなかったので…」


「今日は休むよ。身体が痛いからね。」


 俺がそう言えば、リリアは部屋に入って来ては不思議そうな顔をして、


「なにかしていらっしゃったのですか?別にアルス様を縛りたいわけではないんですけど、少し心配です。私にもなにか相談して欲しいです。」


「あぁ、勿論。俺はリリアのことを一番信頼しているからね。」


「そうだ!アルス様、マッサージしてあげます!」


 そして、リリアは俺の背中に乗ってくる。俺よりも小さな手で俺の身体をほぐしてくれる。


「んっ、どうですか?」


「気持ちいいよ。」


「んっ、ところでアルス様?」


「なんだい?」


 リリアはさっきよりも手に力を込め、


「私以外の女の匂いがするんですけど、誰か部屋に連れてきましたか?」


 勿論!さすがは高貴な血筋なだけあってみんな可愛いからね。口止めもしっかり行っている。


「リリア、心配してるの?多分、姉様かうちのメイドのものじゃないかな。大丈夫、俺はリリア一筋だからね。」


「ふふ、そうですよね!」


 リリアは俺の背中に顔を埋め、抱きついてくる。


「アルス様…、絶対、絶対、離れちゃダメですよ……。一人にしないでくださいね…。」


 ◆


 マッサージをしてもらって、少し身体が軽くなった翌日、学院に行くことにした。


 教室に入ると、ノアが女の子を三人も侍らせている。


(ハーレムクズ野郎め)


「ノア、俺がいない間に彼女増えた?まだ学生だし、一人に絞った方がいいよ。」


「そ、そんな…私とノアはまだ違いますし…」


「ノアくんのお嫁さん…」


「まぁ、ノアがどうしてもって言うならやぶさかではないわね!」


 レイカ、ヘイミー、アリスがなんか言っている。


「アルス、僕たちはただの友達だよ。」


 これが主人公特有の鈍感and難聴スキル!?


「なるほどー」


「あ、そうだアルス。昨日、休んでて言えなかったけど、今週の休日に遊びに行かない?アイシャさんとレイカさんと。男一人だと気まずいからさ。」


「いや、そのメンバーだと俺が気まずい…。まぁ、いいよ。行くか。ヘイミーさんとアリスさんは行かないんだね。」


「誘って見たんだけど二人とも用事があるんだって。」


 ということで、休日の予定が埋まってしまった。


 授業が始まるまで雑談を続けることにする。


「ああ、そうだ。昨日、リリアから聞いたんだけど、教会で一人女の子が亡くなったらしい。外見的には、外傷はなかったらしいけど、不思議なこともあるよな。」


 俺がそう言えば、レイカの顔色は青色に変わっていく。思わず、口が歪みそうになる。


「そうなんだ、知らなかったよ。病気とかかな?どうなんだろう。」


「例えば、どこか怪我して治療が不完全だったとかかな。素人は何もせず、プロに任せるのが一番なのに。」


 俺は間接的に、レイカに対してお前があの娘を殺したことを伝える。


「そうね、私も回復魔法は使えるけど、私みたいな素人が手を出すよりもプロに任せた方がいいわね。」


 と、アリスも考えを話してくる。


「ノ、ノア。ごめんなさい。私は少し御手洗に行ってきます。」


 と言って、レイカは教室を出ていってしまった。


(良い暇つぶしになったな。)


 しばらく待っていれば、教師が入ってきて授業が始まる。


 授業中はだいたい聞いているフリをしながら、別のことを考えている。


(ノアたちとの外出はどうしようかなぁ。)


 ノアとアイシャには仲良くなってもらうとして、レイカには今日傷つけたメンタルを回復してもらおうかな。優しい俺が慰めてあげるとしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る