第24話

【side レイカ】

 私は逃げ出した黒装束の男を追いかけている。早く捕まえてノアの元へ戻らなければ…。そして、ノアに褒めてもらう。


(あわよくば、なでなでなんて…。あぁ、ダメですそんなノアったらぁ〜。うふふ。)


 そんな風に考えてくると、前方から十数本のナイフが飛んでくる。今は街中なので、住民の皆さんに被害が出ないように完全に消滅させる。


(街中では、大きな魔法は撃てませんね。さっさとと捕獲するか、街外へ行ってもらわなければ…。)


「よし、飛ばします。」


 男の背中に接近する。


(よし、捕まえ…)


「捕まるかよ。クソ女!技術も何もないスペックバカが!」


 私が捕まえようとした瞬間、隙をつかれて切り返された。


「むー、ムカつくー」


「もっと着いてこいよ。乳でかビッチ!」


「あー、私はノア一筋です!」


 私は、上級魔法を複数展開した。私の魔法が男を襲う。


 …はずだった。


 男は私の魔法を弾き飛ばし、あるいは避けた。


「おいおい、足が止まってるぞ。チート女。俺が魔法と遊んでる間に近づいて来れば良かったじゃないか?戦闘中に彼氏のこと考えすぎて、舐めプになってるぞ。」


「言われなくても…!」


「おーっと!そういえば、ここは街中だったよな?俺が弾き飛ばしたお前の魔法。当たったら…死ぬぞ。」


「ぐっ」


 私は、四方八方に飛んで行った魔法の対処に向かう。


「身体強化…」


 ………


 ……


 …


(あ、危なかったぁー)


 私は何とか被害0で、抑えることができた。私の不注意で誰かが死ぬなんて、有り得ない。私の魔法のせいで泣いてしまった子供を慰めてから、もう一度追跡に戻る。


(どこに行ったのでしょう。あの人は?)


「すみません。そこの人。黒装束の男の方を見ませんでしたか?」


「あー、その人なら家の屋根の上を跳んで、先程街の外の森の方へ向かったよ。」


「ありがとうございます。」


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「はぁ、やっと見つけました。」


「おぉ、よく見つけられたな。そろそろノアも解決してるところかな。アリスからは感謝され、今は一緒のベットの上…なんてな。」


 ――ドゴーン


「は?いきなり神級の魔法撃ってくるとか殺す気かよ!?」


「なんで、今のを避けれるんですか。だったら、もう一度…」


「そうだ!ちょうどそこで拾った人質がいるんだけど。撃ったらこの娘は死ぬよ。」


 男の後ろからは女の子が顔を見せる。


「お、お姉ちゃん!助けて…、ぐすっ」


「早くその娘を解放しなさい!」


 私は一歩を踏み出す。


 その時、女の子の片腕が飛んだ。女の子の悲鳴が森に響き渡る。


「ごめん、手が滑った。許してちょんまげ。」


 冷静で冷たい声音で、ふざけたことを言っている。


(ちょんまげ…?)


「あなた、日本の人ですか?そのくせ、どうしてそんなことができるのですか!?」


「そうだ。お前とは違うけどな。お前はそういう設定だ。」


「どういう…。いえ、あなたは必ずここで仕留めます。」


 そこで、女の子のもう一本の腕が飛ぶ。大きな悲鳴の後、女の子は失神した。


「ク、クズが…」


「所詮、プログラムだし。てか、もう諦めてくれない?俺の目的はノアとお前を離して、ノアひとりで事件を解決してもらうことだからさ。時間稼ぎは終わりだ。」


 女の子身体を投げられる。私はそれを捕まえ、抱き抱えた。


「じゃあね、死ぬ前に教会にでも行くんだな。お前が繊細な回復魔法が苦手なことは把握済みだ。じゃあな。」


 男は、よく分からない煙と共に闇へと消えていった。


(この娘もいるし、追いかける訳にはいかない。)


「ご、ごめんなさい…。」


 そう言って、私は苦手ながらも回復魔法を使う。魔力のゴリ押しで、腕を再生させることはできたが、繊細な部分は無理だ。血が腕にまで届かない…。


(早く、教会に…。)


 教会にいけば、回復魔法のプロがいる。お金は高いがそんなことは言ってられない。


「ごめんなさい。必ず、助けるから…」

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