第22話

【side ノア】

 Mystery file 2 : アヴェーヌ家殺人事件


 僕達は、殺人現場となったマルス様の部屋に訪れている。部屋の様子は、一人部屋にしては広く、シンプルながらも高価な装飾が施されている。


 棚には、高価なものや学院などで獲得したであろう賞などが飾ってある。そこから、大変優秀出会ったことが伺える。


「マルス様は大変優秀でございました。それが、このようなことになってしまい悔しい限りです。」


 と、執事さんが話しかけてくれる。


(うーん、誰かの恨みを買っているなどはないか…)


「執事さん、昨日は変わったことなどありましたか?」


「いえ、使用人たちの出入りもなく、お変わりはありませんでしたね。強いて言うならば、アリス…様が昨日になって突然帰ってきたことでしょうか…。まだ、平日なので寮に帰るでしょうに。」


「なるほど、それで、皆さんはアリス様を疑っているのですね。」


 普段は帰ってこないアリスさんが帰ってきたその日に事件が起こった。確かに、それは怪しいが、アリスさんだとしたらバレバレ過ぎないか…。


「ノア…、やはりアリス様なのでしょうか…?」


「今の状況だと、その可能性が高いと言わざるおえない…。次は部屋を調べることにします。」


「えぇ、ご自由に。何かあれば、私にお申し付け下さい。」


 マルス様が殺されたどあろうベットの上。そこには、魔力の流れが見えている。


(この魔力は、アリスさんのとは違うか)


 僕は、クラスメイト全員の魔力を解析済みだ。授業中などを使ってしておいた。


 今回の場合、魔道具の可能性もあるからアリスさんの白とはならないが…。この家は魔法の名門だ。犯人がこの家の者なら自分の魔法を使いたいというプライドを持っていてもおかしくない。


「何故、殺す必要があったのか…」


(思考しろ。)


 アリスさんを犯人として終わらせるのは簡単だ。まずは、別の人を犯人として考えよう。


 マルス様がいなくなることによる変化…

 アリスさんまたは、その相方が当主の席に着く。優秀なマルス様が当主になるより、アリスさんが当主の方がメリットが大きいということだ。


 だとすると、何故アリスさんが怪しまれるような日に犯罪を侵した?


 そうか、この時点でアリスさんしか後継がいない。アリスさんが犯人ということになれば、勝手にアヴェーヌ家の力で事件はもみ消すことが出来る。後継者がいなくなれば、困るだろうし、そうするだろう。


(人殺しの犯人ということにされたアリスさんはこの家で大きな力を持つことが出来ない。)


 そこにつけ込んで、裏からこの家を乗っ取る。僕が側近ならそうする。


 そうだ。アリスさんが犯人でないと仮定すれば、犯人は側近の誰か。動機は、この家の乗っ取りだ。


「ノア…?大丈夫ですか?」


「レイカさん、ありがとう。大丈夫です。…執事さん。この家の使用人たちの名簿を見せて貰えますか?」


「畏まりました。すぐに、用意します。」


 執事さんに名簿を見せてもらう。


「執事さん…。あなたもこの家の古参なんですね?」


「えぇ、先代に拾われ、長らくこの家に仕えております。」


「そんなあなたにお聞きしたいのですが、何故アリスさんを冷遇するのですか?彼女もまた優秀でしょう?」


「…先代や現当主、マルス様と比べると全てが劣っているからでしょう。」


「…よくわかりましたよ。あなたの気持ち。」


 感情も読み取らせて貰いました。


「この部屋の調査はもういいかな。じゃあ、もう一度アリスさんに話を聞きに行こう。レイカさん。」


「はい。」


 と言って、僕達は部屋を後にし、またアリスさんの元へと向かう。


「(今までの人達よりも劣っているから、冷たくするなんて酷いです!)」


「(魔法使いなんてものは、とにかく才能主義だからね。ここの使用人たちも全員優秀な魔法使い達なんだよ…。)」


 隣で歩くレイカさんはむーっと頬を膨らませていた。

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