第21話

【side ノア】

 アイシャさんに連れていかれた僕は、空き部屋にいる。


「さぁ、教えてください。今回の試験は一年生のレベルじゃないものも混ざっていました。それなのに、どうしたらあんなに点数が採れるのですか?」


「んー、いやー、頑張る…?」


「私も頑張ってます!」


 そんなこと言われてもなぁ、授業聞いてればできるしなぁ。アドバイスすることなんて…そうだ!


「アイシャさんはおそらく、予習も復習もして、完璧であろうと頑張っていると思うんですけど…、息抜きとかちゃんとしてますか?」


「息抜き…?必要ありません。努力するのみです。」


「息抜きもした方がいいですよ。余裕が持てますし、効率も上がると思います。多分…」


 ずっと、勉強し続けるとか、鍛錬し続けるとか僕には無理だなぁ。


「でも…やり方が分かりません。お茶会などですか?」


「まぁ、それでもいいんですけど…それじゃあ遊びに行きませんか?街に。いやいや、勿論二人きりとかではありませんよ。他にも人を誘います。」


「?、何を焦っているのです?二人でもいいですよ。」


 え?変な噂とかたったら困るだろうし、婚約者も…そういやいないんだったな。何故か。


「えーと、レイカさんを誘います。(でも、それじゃあ僕に変な噂がたつ…から、)アルスも誘います。」


「それでは、1週間後の休日に。」


 アイシャさんは部屋を出ていった。


(僕も寮に戻ろうかな?いや今日は一旦事務所に行くか。)


 翌日、僕の元にはひとつの依頼が舞い込んだ。


(ほー、アヴェーヌ家の次期当主と言われていたマルス様が昨日、殺害されたと…。犯人はアリス様が有力であるだと…?)


 そんなことは、とりあえず調べてみなければ分からない。それにしても、僕が事務所に戻る度に事件が起こるな…。いや、まさかな。


 その後、僕はレイカさんを呼び出し、アヴェーヌ家に向かった。


「よく依頼を受けてくれた。ノア殿。私が被害者の父であり、現アヴェーヌ家当主ライン・フォン・アヴェーヌだ。まぁ、犯人はアリスの無能だろうがな。念の為に依頼をさせてもらった。」


「ご指名頂き光栄です。調査をしてみなければ、分かりません。まずはアリスさんにお話を聞いても…?」


「あぁ、構わない。自由にこの屋敷のことは調べてくれ。」


 そこで、僕達はアリスさんの部屋へと向かった。


「(ノア、それにしても酷いですよね。アリス様をあんな風に…、ほんとに父親なんですかね。)」


「(使用人たちの魔力から感情を読み取っても、そんな感じだ。アリスさんは家ではそんな立ち位置なんだろう。悔しいが…)」


 そうして、アリスさんの部屋の前に辿り着く。


 ――コンコンコン


「同じクラスの探偵のノアです。アリスさん、少しお話を聞かせて貰ってもいいですか?」


「…嫌よ。どうせ、あなたも私が殺ったと思っているのでしょ?」


「いえ、そんなことはありません。」


 確かに、怪しいのは変わりない。動機だって、力が欲しかったとか、権力が欲しかったとか色々と思いつく。


「それでは、現場の方を先に見てみることにします。行きましょう、レイカさん。」


「はい。」


 僕はアリスさんを信じたい。けれど、


(クラスメイトが犯人でも犯人じゃなくても関係ない。甘さを捨てろ。私情だけで要素から外すな。僕が事件の真相を解き明かしてみせる。)

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