第16話

【side ノア】

 Mystery file 1 : 家族


 模擬戦があった翌日の朝早く、学院に向かって歩いている。昨日は私用があって自分の事務所で寝泊まりしていた。


「あ、あの、ノアさん。少しいいですか…?朝早いのにすみません。」


「えぇ、大丈夫ですよ。確か、ヘイミーさんですよね?」


 僕に話しかけてきたのは、同じクラスのヘイミーさん。


「何か御用ですか?」


「ノ、ノアさんって、探偵さんなんですよね?依頼を受けて貰えませんか?」


「承知しました。詳細は僕の事務所でお聞きしますので、一緒に着いてきてください。」


 そう言って、僕達は事務所へと向かった。


 ――探偵事務所内


「こんなものしかありませんが、どうぞ。」


 僕は、ヘイミーさんにお茶を出す。


「あ、ありがとうございます。」


「それでは、依頼について、聞かせてもらいましょう。」


「は、はい。分かりました…」


 僕は、ヘイミーさんの話をしっかり頭に叩き込む。


 ヘイミーさんが事件のことについて知ったのは、昨日、お父さんの手紙によって知ったらしい。そこで、ヘイミーさんは僕に依頼をしようと思ったらしい。


 事件の内容は、3日前に妹が外に遊びに行ったきり返ってこなくなったらしい。街の騎士団にも報告をしたらしいが、平民だからか真面目に取り合ってくれないようだった。


「…なるほど。その依頼、お受けしましょう。僕が必ず解決します。」


「ありがとうございます!」


「それでは、まずヘイミーさんの家を調べさせて貰っていいかな?」


 事態は、早急に解決する必要がある。すぐさま、ヘイミーさんの家に向かった。レイカさんは居ない。学院で大変だろうし、休んでもらいたいからね。


(僕一人で真相にたどり着いてみせる。)


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 ヘイミーさんの家に着いた。家は小さめで、お金はあまりない、というのがわかる。


「ただいまー」


 ヘイミーさんの両親、兄が、「おかえり」と出迎えてくれる。


(あぁ、なんかいいな。家族のこの感じ…)


「皆さん、初めまして。僕は依頼を受けてこの事件を調査する探偵のノアです。妹さんは僕が必ず探し出します。」


「はい、お願い致します。どうか、よろしくお願いします。」


 魔力の動きでわかる。表面上は落ち着いているが、相当焦っていることが…やっぱり家族のことが心配なんだな。


「それでは、まずお話を聞かせてもらいますね。生活面の事とか?」


「はい、私たちの生活は、なかなかギリギリですね。私と妻と息子で働いてなんとか生活できております。それに、ヘイミーの学費もあってね…」


「ごめんね。お父さん、お母さん、お兄ちゃん…」


「気にすんな。ヘイミー、お前がAクラスに入ってくれたおかげで、予定よりも金額は減ったんだ。それに、最近多めに金が入ったしな!」


 と、お兄さんは言っている。


「ちなみにどうして、お金が入ったんですか?」


「運だ。モンスターがレアドロップしてくれくたんだ。」


「教えてくれて、ありがとうございます。」


 その後、僕は許可を貰ってから家の中を捜索した。


 捜索していて気になったことは2つ。


 ゴミ箱に、雑に破き丸めて捨ててあった、この家庭ではあまり買わないような良質な紙。


 ギルドで換金したという金に一種類の魔力しか残っていないこと。ギルドなんて冒険者の多いところであのお兄さんの魔力しか残っていないなんてありえない。


(そうか、分かったぞ。)


 あのお兄さんが金のため、生活のために妹をどっかの貴族に売りに出したのか…


 だが、それだけでは売りに出したりはしないはずだ。あのお兄さんだけを呼んで聞いてみよう。


「それで…何かわかりましたか?探偵さん?」


「えぇ、解決しました。あなたが妹さんをお金にかえた。そうですよね?」


「はぁー、そうです…俺がやりました。でも、家族には言わないでほしいんです。これは俺たち、家族の為なんです。」


「どうゆうことです?」


「言えません。言えば、俺は死ぬ。そうゆう、魔法の契約をかけられました。」


「…何もかけられてませんよ。魔法…僕には相手の魔力、相手に施されている魔法全てが見えるんです。」


「へっ?」


 ………


 ……


 …


「実はですね、4日前にどっかの貴族様に会ったんですよ。そこで、ですね。妹を預けてくれれば、多額の報酬をくれて、さらに妹にはうまい飯、良質な寝床を提供してくれるって言ったんですよ!」


「それを…信じちゃったと?それに魔法契約も嘘でしたし、妹さん危ないんじゃないですか?」


「そうだとしても…、やるしかなかったんです。この話を飲まなければ、俺たち家族を全員皆殺しにするって…脅されて…」


「…あなたはこれからもみんなと幸せに暮らしたいはずです。妹さんも、裕福な暮らしよりあなた達と暮らしたいはずです。。」


(おしえて下さい。)


「お願い致します。妹を助けてください。俺一人ではどうにもならない…、場所は…」


 場所を聞いた僕は、身体強化を身体に纏い、家を出る。場所は隣街。何をされているか分からない急がなくては…


「レイカさんに手伝って貰うしかないな。学院に…」


「よぅ、ノア。どうした?そんなに急いで。」


「ア、アルス…」


 どうして、ここに?

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