第9話
さて、今日は茶会当日だ。馬車で公爵家へと向かうことにしよう。
公爵家の前に着けば、屋敷からは重苦しい雰囲気が伝わってくる。
(成功だ。)
ターゲットの馬車に仕掛けた魔道具はとても小型で衝撃により跡形もなくなっているだろう。魔力は少し残るだろうが、ノアは現在、他国でお仕事だ。あいつが介入することはない。つまり、予定通り事故として扱われているだろう。
「あ、アルス様。お久しぶりです。お嬢様は中庭でお待ちしております…」
「ありがとうございます。」
メイドの案内で、中庭まで向かう。
「ア、アルス様。お待ちしておりました。」
(元気、なさそうだな。)
「本日は、お招きいただき誠に感謝致します。」
と言って、とりあえず2人共席に着く。この茶会席は三つあるがひとつは空席だ。
「あの、すみません。婚約者様はどうなされましたか?」
と、もちろん何も知らないフリをして聞く。
「は、はい。それは…それはですね…。それは…それは…。あ、あ、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーーー」
「昨日、事故でお亡くなりになられたのです。」
と、そばに仕えているメイドが耳打ちしてくれる。
「それは…何も知らずに聞いてしまい申し訳ございません。」
「グスッ、グスッ。いえ、大丈夫です。アルス様が知らないのは仕方ありませんから…。」
そこで、俺はハンカチを差し出す。このハンカチは、リリアの婚約者がリリアのために買っていたハンカチだ。現場から持ち出した。
「グスッ、グスッ。ウッウッ、ありがとうございます…。」
ここからは、リリアが落ち着くのを待った。
この時に、メイドには下がってもらった。
「失礼しました。お見苦しいところをお見せしてしまい…」
「いえ、辛いことがあれば、悲しいことがあれば泣いていいんです。貴族だからとかも関係なく、一人の女の子として、沢山泣いて下さい。切り替えることなんでできないし、忘れることなんて出来ない。それでも、また前に向かって進んでいきましょう。私も、手伝います。お支えします。」
(我ながらよく回る口だな。)
「はい…そうですね。じゃあ、今日は彼との思い出話を沢山聞いてくれますか?」
「えぇ、勿論です。」
そこからは、リリアと彼との思い出話をずっと聞かされた。
………
……
…
(頑張れ、俺!耐えろ、俺!寝るな寝るな!あと少しだ!)
「それでですね…。グスッ、あれ、ごめんなさい。話していて、整理できていたと思ったん…ですけど。やっぱり、涙止まらないや…」
そこで、俺は、リリアを前から抱きしめた。
「大丈夫です。伝わりました。彼への思い。………リリア様、ずっと話を聞いていて、思ってしまいました。あなたをずっと傍でお支えしたいと。私では彼のようにはなれないかもしれない。けれど、これからの人生、私と一緒に歩いて行けませんか。あなたの心に惹かれました。ここで、誓う。私は急に居なくならない。ずっと、あなたの傍に居る。私と…婚約してくれませんか?」
「……私は彼のことを忘れられません。それでも、いいならこんな弱い私を支えてくれますか?」
「勿論です。」
そこからは、ずっと抱きしめた。リリアが落ち着くまで…
(うおっしゃー、権力!権力!金ッ!金ッ!作戦成功、やったー)
――公爵家内
「公爵閣下、お久しぶりです。この度、不幸な事故が起きてしまったこと大変お悔やみ申し上げます。」
(俺がヤッタンダケドネー)
「あぁ、そうだな。私と彼のことは息子のようには思っていた…」
「公爵閣下、リリア様を私に下さい。私は、この弱っているリリア様をお支えたい。」
「お父様、私からもお願いします。」
「……承知した。アルス殿なら問題はないだろう。娘のことをよろしく頼む。婚約に関する発表はもっと後にしよう。変な噂を立てられるやもしれんからな。」
「お心遣い、感謝致します。」
はぁー、疲れたぁ。あとは、さっさと家に帰って寝ようかな。
「ア、アルス様。もし、よろしければなんですけど、今晩は一緒に寝てくれませんか?」
と、リリアは不安そうな顔で聞いてくる。
「はい、リリア様、構いませんよ。」
と、リリアの部屋に一緒に向かった。
「食事もこの部屋に持ってくるように言っておきました。」
「そうなんだね。」
リリアは部屋に入るなり、俺に引っ付いては、ずっと離れない。
「アルス様、2人きりの時はいいですよね?」
「リリア様のお好きなように…」
この後はすごい密着されながら、会話をして、ベッドに入った。
「アルス様、アルス様。ギュー!」
(意外と、胸ある…。耐えろ、俺の息子…)
流石に犯すようなときではない。この状況でヤれないとか、今世で一番の苦戦ポイントだぜ。
「アルス様?」
「なんでしょうか、リリア様?」
「これから、呼び捨てにしてくれませんか?それに敬語もいらないです。」
(それは、ありがたい。敬語って面倒くさいし疲れるしね。)
「……リリア」
「はい!」
「愛してる」
「ふふん。」
(ちょっろ、ちょろちょろチョロインじゃん)
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