第6話

 俺が少し絡んだ連続殺人事件は無事にノアが解決した。魔力を使わずに殺した死体を見た時ノアは一瞬複雑な顔をしただけで、すぐに調査に戻った。正直、ガッカリだ。


 犯人の捕縛までサクッと行っていた。こっそりと見に行ったが、助手の勇者のスペックは思ったよりやばかった。単純な剣術で魔法を切って消滅させていたし、上級以下の魔法は何もしなくても無効化していた。相当、遠くで見てたのにこっち向いてきた時はマジでびびった。多分、バレてないと思う。多分…


 数秒なら打ち合えるかもしれないがそれ以上は死ぬ。勝つビジョンが見えない。間違っても喧嘩は売らないようにしよう。今はまだ…


 切り替えまして、そんなこんなで俺は今森にいる。何故、森にいるかと言うと、婚約者探しだ。


 ほとんどの貴族は学院前に婚約者を持つ。両親は優しいから、今まで俺に選ばせるつもりで何も言ってこなかったが、さすがに13歳にもなれば両親も焦っているんだろう。このまま、誰も見つからなければ、両親が適当に相手を見繕うらしい。


 そこで、俺は異世界転生あるあるの

「森とかで困ってる爵位の高い貴族を助けて、そこから発展」

 を求めて森をコソコソと探索している。


「おっ!」


 どうやら、俺は運が良いらしい。

 馬車が盗賊に襲われているようだ。


「ちょっと、様子見かな。」


 よく見てみると、あの馬車は公爵家のものだ。これも、なかなか運がいい。公爵家なら有用性がある。盗賊達には頑張って貰いたいところだが、さすがは公爵家の護衛の騎士達だ。馬車から離れず、余裕に盗賊達をあしらっている。


 そうだよな、公爵家程の爵位の高いところの護衛がその辺の盗賊に遅れをとるわけがないよな。


「下衆な盗賊共、我らが公爵家を狙っといえば、生きては返さぬぞ。」


「お頭、分が悪いですぜ。」


 ここのままでは、あいつら何も出来ずに逃げてしまう。そう思った俺は、魔道具を取り出した。この魔道具は「対象の能力を何倍にも底上げする」といったものだ。上限はあるけどな。勇者とかに使っても多分意味は無い。


 ――発動――


「さあ、盗賊共よ。限界を超えろ。」


 俺がこれを使った途端、戦況は一変した。


「!、なんか知らねえが、すげぇ力が湧いてくるぞ。お前ら勝てるぞ!男は殺して、女は犯して、金品奪って美味い酒飲むぞぉー!」


 うおーーーーー


「何が起きたかは知らないが、何度もやっても同じことよ。お前たち応戦するぞ。」


 すげぇな。見るからに、動きが変化した。

 跳躍で、相手の頭上を飛び越えては後ろから切り裂いたり、騎士達が反応できないような突きを繰り出している。騎士達はひとりまたひとりと死んでいく。


 騎士団のリーダー的なやつは、俺が公爵家にとりいった時に使えるかもしれないから生き残ってもらうか。リーダーがとどめを刺される瞬間に助けに入るか。絶望的状況であるほど、希望は強く輝くからな。知らんけど。


「ここか…」


 俺は飛び出す。


 ――キンッ


「大丈夫ですか。あとは、私にお任せ下さい。すぐに片付けます。」


「ちっ、ヒーロー気分の坊主か。へっ、辞めとくんだな。今日の俺様は調子が良いんだ。」


 俺はとりあえず、相手を押し返した。


(当たりだ。公爵家のお嬢様いるじゃーん。)


 俺なら盗賊全員を瞬殺することが出来る。だけど、少し打ち合うか。お嬢様の眼に焼き付けるように。自分たちの前に颯爽と現れた英雄が戦う姿を…


 とはいっても時間はあまりかけなかった。今回の戦闘はとにかく魅せプしまくって戦った。もちろん、手抜きには見えない真剣な顔で。少し、楽しかった。


「ふぅー」


 と一息ついて…


「大丈夫…ではなさそうですね。お嬢様と騎士の皆様方。申し訳ありません。私がもう少し早くここにたどり着くことができていれば、誰も死ぬことはなかったかもしれないのに…。ぐっ…」


 俺は迫真の演技を繰り出す。ついでに、地面に八つ当たりしとく。


「気にしないで…下さい。はぁはぁ、死んでしまったのは、我々騎士団の力不足です。あなた様が来てくれなければ、ここで我々は全滅でした。感謝はすれど、責め立てるようなことはしない。」


 と、戦闘での傷が痛むだろうに、騎士団のリーダー的な男は慰めの言葉をかけてくれる。


(辛そうなのに、わざわざ…。性格いいな、こいつ。)


「そうでございます。私は、公爵家の長女リリア・フォン・アルデンヌと申します。此度は、私たちを助けて頂き誠にありがとうございました。亡くなったもの達もそうやって悲しんでいただけると浮かばれます。」


(可愛いー)


「私は、伯爵家アルス・フォン・オルレアンと申します。そう言っていただけると私も心が軽くなります。良ければ、街まで護衛しましょう。亡くなってしまった方々のご遺体も一緒にお運びします。」


「申し訳ありませんが、よろしくお願いします。家の騎士の皆さんはボロボロであまり動くことが出来ないので…。必ず、お礼は致します。」


「はい、お任せ下さい。」


(なかなか、好感触じゃないだろうか)


 俺は、内心ウキウキ、表情は少し苦しめの感じでお嬢様方と街へと向かった。


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 キャラクターの見た目の描写はこれからもあまりしないと思います。皆様が頭の中で自然と思い描いたものが最高のビジュアルだと思うので。

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