昆虫採集は男のロマン!たとえ相手が巨大肉食昆虫だってビビったりしないぞ!

猫3☆works リスッポ

第1話男の子だって昆虫採集がしたい

「これは例外だ、今回に限り任命を認める」

内閣総理大臣 飯沢 真子

眉をひそめたまま押印する。

心なしか指先が震えているのは責任の重さか怒りのためか自分でも判らなかった。

この件に関しては何度も会議を重ねた。

現時点で希少種を戦闘に投入することにはこの国だけの問題ではなく国際世論の反発もある。

「男のくせに昆虫採取したいなんて大馬鹿だよ」

男が外に出るなんてなんの利点もありはしない、男は家の中に引きこもらなければならない、保護対象だ。

外に出るときは「採種」に限られている、これは世界の常識になっている。

しかし半年前に男の権利を要求した人権団体が騒ぎを起こしてテロ寸前になってしまった、外国では軍で抑え込み死者を出しても拒否したそうだが日本でそれは出来なかった、そのために例外の例外、特例の特例で任命を認めた。

「某国の陰謀だ・・」「経歴に汚点が付いた」

ぼそっとつぶやく、母の後を継いで参院選に初当選からここまで25年、総理大臣となるまでに何事も強権対応で突破し政権運営をしてきたが初の失態だった。同じく総理大臣であった今は亡き父が見たらなんと思うだろう。

いつの間にか押印した書類は片づけられ窓の外には夕闇が迫っていた。


4月の北海道はまだ寒く桜が咲かないどころか所々に残雪の気配さえある。

「寒っ!コートが要るって本当だったんだな」俺は見通しの甘さを後悔して震えながら歩く、駅から1km、ゲートから更に1km、合計2kmの距離を外套なしの制服のままで歩くことになってしまった、服も全部宅急便で送らなけりゃ良かった。日が当たっているところは暖かいとはいえ時折吹く風の寒いこと!。

ああ背中のリュックが寒さをしのぐ、とても愛おしい。


あっと、のんびりしている場合じゃないな、もう見えるところにいるのは警備員しかいないし道路の奥の建物に辞令交付会場に向かっているはずの最後の一人が吸い込まれていく。

「遅刻遅刻うう」昔の漫画さながらに俺は走った、漫画と違って女子高生とぶつかったり校門を閉めたりされることはないけれど

と建物の式辞会場扉が閉まる直前滑り込みなんとかジャストタイム!。


☆以下訂正中・・・

ピリッと張り詰めた肌寒い空気のなかに澄んだ青空が澄み渡る、航空機の発着も可能とする設計の4車線の道路の奥にこの町には不釣り合いなな巨大建造物がそびえ立っていた。

建物のどこまでも白い入り口には、このご時世になっても相変わらず「辞令交付会場」と筆文字で書いた看板が立てかけられていた。

「へえー部屋の天井が高いなあ2階分くらいかな、奥の高級そうな演壇の後ろには、あれって日の丸と国連旗か。」

俺は辞令交付会場内のざわめきの原因が自分と気が付かずにきょろきょしていた、もう既にテンションマックス!

「4月1日12:00をもって、そんな訳で本日12:00分において「男の子」インセクト-ワルキューレ隊がっ発足しました!」

もうわくわくが止まらない、女子しかなれない昆虫討伐隊通称「昆虫採集」の初の男子隊グループのメンバーに選考されてから毎日興奮で眠れないでいた、そうしてついに叫んでしまったのだ。

「こらそこの・・黒川零和だったな、勝手なことをするな、辞令を取り消すぞ!」

その声であちこちでしていた話し声が急に静まり、群衆に紛れていたはずの俺たちの存在が急に露わになった、そしてその関心が俺たちに集まった、俺たち以外は全員女子という恐ろしい視線を受けて怖くてちびりそうになってくる。

「あれが噂の男か、男ってあんな体格してるんだな思ったより貧弱だね」太い声で30歳ほどの彼女は大柄な体躯をそらし不機嫌な様子で目を細めた。

「男になんて何が出来るのよん、黙って引きこもって種馬してりゃいいものを図々しいのよん」足下の方から甲高い声がした、身長130センチほどの見た目は超小柄の中学生にしか見えない。

「そういうあんたもずいぶん若いけど搭乗できるのかしらね、ママのおっぱい恋しくないのかな」金髪に染めた中肉筋肉質の彼女は子供の頭をなでる仕草をした。

「何言ってるのよん、実戦部隊はどんなに若くても全員経産婦ですよん、万一戦死しても子供は残るしあたいの務めは果たしてるでしょん」

ざわめきが拡大していくところで

パン!壇上の女性が手をたたく。

短く切りそろえた白髪を紫に染めている、60歳くらいだろうか、ピンと伸ばした背筋に白の正装、階級章などを身につけている。

「あー静粛に、ここに珍しい動物が6匹いるが気にするな。この組織は特殊戦昆虫部隊special warfare insect squad 通称swisである、「昆虫採集」ではないからな、私は総司令の高島綾である、今後よろしく頼む。この組織についてはここにいる諸君は困難な試験を特に優秀な成績で突破していることから当然知っていることとは思う、しかし改めて説明を行うものである、余談だが組織を作ると建物を作りたがる国民性のためここも建築されたと思うが、研究、武器開発拠点を兼ねているために新築されたということでもあり新築は必然である、なお設置に関して危険防止のため東京や主要都市から離れたこの場所「奈井江」が選ばれた。此処には昆虫の素材がありこれは我々の武器であるとともに奴らを誘引する原因でもある。

地下階数は諸君には非公開で地上45m、階数はやはり非公開。これらの情報は階級が上がればアクセスできる。

実戦部隊は6人編成20ユニットの120人研究開発やバックアップの1320人が今回の辞令の対象である、そのうち新規採用者は実戦18人、バックアップ45人である。念のために言っておくが、定員は昨年より変わっていない、退職、異動者もいない、つまり諸君らは補充要員である、ゆえにおじけずいたものは帰れ、また万一の場合は家族に年金が支給されるので安心するように」

「ううう死亡率高いなあ、やめないけど」

高島は残りの進行を部下に任せ着席した。

あれは1ヶ月前のことだ。

「高島総司令、内閣からの命令書をお渡しします、よろしくお願いします。」

「ちっ、あのやろう無茶を言うなあ」根回しはされていたし内容は把握しているが正直自分の代で受け取りたくはなかったな。

「調書によると彼ら6人は最近の男には珍しい「原生種」らしい、もっともそれがどれほどの物かは判らないが、融合に耐えられる可能性はあるが当面ハンドユニットの装備訓練だな、いきなり昆虫機に搭乗すると死ぬぞ」

まったく上は何を考えてる、男は実戦向きじゃないことくらい歴史で証明されているってのに、

最初に挑戦した男達はみんな死んだんだぞ。

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