第6話 涙
鬼灯そう
こ こ に い て い い よ
このたった8文字が俺の体を縛り付けるように俺は動けなくなった。そして俺は泣いていた。無意識に泣いていた。
目が熱い。視界がにじむ。目の前にいるはずの伊弦の姿がぼやけて見えない。
なんで?
俺は今までずっと泣かなかった。泣けなかった。どれだけ悲しくても悲しいだけで終わっていたのに。初めて出会った何も知らない奴の言葉で俺は泣いた。
手で涙を拭う。彼が微笑んでいた。
優しい目だった。
見たことがないくらい優しい目だった。
俺は声を上げて泣いた。子供のように心の限り叫んだ。俺は床に崩れ落ちた。
苦しい、苦しい、苦しい、苦しい、苦しい
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああっ!!!」
とにかく泣き叫んだ。
どれだけの時間が過ぎたのかわからない。ようやく自分を制御できるようになってきた。呼吸を整える。ふと彼を見る。
彼は、困っているような、戸惑っているような顔をしていた。
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