第5話 居場所➁
さっきはごめん。
そう一言残して彼は教室を出ていった。それ以上何も喋りはしなかったが扉が静かに閉められたからもう怒っては無いだろう。
「ここに居ていいっていったのに帰っちゃった…」
少し寂しくなったが何となく明日も来てくれるような気がした。それより左手から出た血をどうにかしなくてはいけない。
とりあえず僕は左手をティシュでおさえて床に落ちた血を拭いた。そのティシュをゴミ箱に捨てようと立ち上がったそのとき、扉の隙間から彼が顔を覗かせているのが見えた。
「どうした…の…?」
「あ、の、、絆創膏もってきた、から」
彼は恥ずかしそうにそっと隙間から絆創膏を差し出してきた。
「入っていいよ?」
さっきは躊躇うことなく入ってきたというのにまるで別人のようだ。
「ありが、と、、」
「こっちこそ、わざわざありがとう。」
「いや、俺が怪我させたから、」
「いいんだよ」
僕は彼と何処か似ている気がする。似ているというか同じような環境、空き教室と家で孤独を感じているのだろう。そんなことを考えながら絆創膏を貼る。
何か彼に言わないといけないような気がする。
もう一度、あの言葉を
「ねぇ?」
「な、に…?」
「ここに居ていいよ。」
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