第2話 出会い
高校生活をほぼほぼこの空き教室で過ごしていたが、誰かが入ってくることは今まで一度も無かった。
だから鏡から絵へと視線を戻した数秒後、ちょうど12時を告げるチャイムが鳴ったとき
勢いよく開けられた扉の音に思わず悲鳴を上げてしまった。
「え…誰……?」
僕の質問に彼が答えることはなく、ただ不機嫌そうな顔をしてこちらを見つめていた。
左手には小説が握られていた。
「えっとー、だから君は?何でここに来たの?」
もう一度問いかけてみる。すると、彼の口がゆっくりと動き出した。
「俺は鬼灯そう、家にいたくなかったから適当に空き教室探してた。」
そう言って僕を指さして
「そしたらお前がいた。」
と付け足した。
上靴の色から僕と同じ三年生だと分かった。この教室には用が無いよと言うように彼が扉を閉めようとしたのを見て僕はとっさに止めた。
「待って、」
この先の言葉なんて考えてなかった。でも、僕を見つけてくれた人間があっさりと離れて行ってしまうのが嫌だった。
「何?」
僕は少しの沈黙の後にこう言った。
「ここにいていいよ。」
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