第37話 行先は須崎神社

「ねぇ、修二君 今日はどこに行くの? 随分、歩いた感じがするんだけど…」

和美が修二に視線を向けて聞いた。

「あー、そうか…。俺、知らないんだわ」

「え?」

〈もしかして、修二君て天然? 行先も決めてなくて歩いてたのかい〉


「どこ、行きたいの?」

「―んとね、和美さんが20年前に赤ちゃんを置いた神社」

「え?」

「俺、ずっと気になってたんだ。もしも生きてたらさ、その子、

俺くらいの年齢になってるじゃん」


和美の足がピタッと立ち止まる。


「和美さん?」


「……生きてないよ…きっと…」


「でも、何か手がかりはあるんじゃない?」


「え?」


「じゃないとさ、和美さん前に進めないでしょ」


「でも…ちょっと、怖いよ」


「うん…。大丈夫、きっと生きてるよ」


「なんで? そんなこと言えるの?」


「なんとなくね、そんな気がする…」


「もう、いい加減だなあ…」


「和美さん、手の平 見せて?」


「え、手の平?」


和美は修二に手の平を見せる。


「ほら、ここ。生命線めっちゃ長いでしょ。きっと和美さん

俺より長生きするよ」


「そんな、手相なんかで…」


「和美さんの子だもん。きっと、生きてるって…」


修二は根拠のない言葉を言って和美を元気づけているが、和美の心は

不安で押しつぶされそうだったら……


その足並みが神社に近づくにつれ、20年も前の記憶が和美の脳裏に

蘇ってくる。


和美の足はガクガク震えていた。


修二は強く和美の手を握りしめ、『大丈夫だよ』と和美を安心させるように

囁きかけると2人は鳥居をくぐり境内へと入って行った。



そして、そのまま奥にある屋敷へと進んで行った。


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