第33話 愛欲

〈20代の若い男の子なら、まだ性欲が落ちるほど、歳がいってないはずだ〉

〈同じ家に暮らしているとはいえ私は38歳で彼は23歳。その差15歳〉

〈やっぱり、歳って気になるよな〉

〈っていうか、食費も光熱費も生活費そのものが修二君もちだ…〉

〈なんで、修二君は私の生活全般をみてくれてるんだろ〉

〈同情? それとも愛情?〉


風呂上がりの和美は自分の身体をマジマジと見下す。多少は薄くなっているけど、

所々に残る薄紫色のアザ。

 

〈愛欲はないか…〉


〈こんな身体、誰も抱きたくないよね〉


〈ほんとに…嫌になるくらい汚い身体だ……〉


〈顔にアザが残らなくてよかった…それだけでも救いだ〉


〈修二君にこんなアザ見せられない……〉


コンコン。


脱衣所のドアをノックする音。


「和美さん、ご飯できたよ」

修二君の声がドアの向こうから和美の耳に聞こえる。

「ああ、うん。今、行くね」

和美は急いでパジャマに着替えると、脱衣所を出て行く。


〈私も仕事、見つけなきゃ…〉



和美がダイニングキッチンに入ると、ダイニングテーブルには夕食が

用意されていた。


「美味しそう。修二君、料理の腕あげたね」

「どうも…」

修二は和美に視線を向け、子犬みたいな笑顔で微笑む。

〈ああ、この笑顔好きだ。めっちゃ癒される〉


和美と修二は向かい合わせに座る。


「じゃ、食べようか…」

「うん…。いただきます」

「いただきます」

「うん、美味しい」

和美は美味しそうに食べていた。その表情を見て、修二は少しホッとしていた。


「和美さんに笑顔が戻ってよかった (笑)」


「修二君、私、働こうと思うの。いつまでも修二君にお世話になっている

わけにもいかないしさ」


「俺なら、いつまでもここに居てもらっても構わないけど 」


「そうはいかないよ。私なんかがいたらさ、修二君、彼女を家に連れて

来れないでしょ」


「別に彼女なんていないし」


「これからできるかもしんないじゃん。まだ、若いんだし性欲だってさ…」


「え…?」


「あ…その…私がいたら…彼女と…できないかなって…」


「だから、彼女なんかいないって言ってるでしょ!」

突然、温和な修二が声を張り上げた。

和美は少し驚いた表情を見せていた。


「……ごめん」


「ううん、ちょっとビックリしただけだから…大丈夫」


「ねぇ、和美さん…俺が性欲がない男とでも思ってた?」


「え?」


「もしかして誰にでもあると思ってた? それ…違うよ…」

修二は箸を置く。その後、立ち上がり和美のそばまで行くと強引にその手を掴んだ。


「修二君?」


そして、修二はそのまま和美を寝室へ連れ込むと、和美をベットへ

押し倒した。


「修二君…」


修二は和美の上に馬乗りになり、その艶のある唇を奪う。


〈それは強引だけど優しいキスだった〉


「俺がどんだけ我慢してると思ってるの? 俺が抱きたいと思ってるのは

和美さんだけだよ 」



〈その感情は同情じゃなくて愛欲だった…〉






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