第30話 二度の結婚と二度の離婚

18歳で都会に出た和美は友達の紹介で25歳の時に結婚するが、夫にはかなりの借金があり、借金返済の為 娼婦として売られた。

借金を返済した後、夫とは離婚するが、その後 普通に会社に勤めた和美は上司の

セクハラとパワハラに遭い、極度のストレスが溜まり会社を退社し、夜の仕事へと

足を踏み入れた。


キャバクラ嬢としてナンバーワンになった和美は店の客に求愛され、金持ちの御曹司と結婚するが、束縛がひどく約束を守らない時はベットの上でお仕置をされる。

時にはその美しい肉体をモテ遊ばれ一人よがりに興奮する夫のあざ笑うように

見下した目に怯えながら暮らす日々を耐えていた。

その夫の会社が倒産し、毎日 荒れ果てる夫は和美にDVを与え続けていた。

性的暴力に犯され、自分の思うようにいかなければ殴る蹴るの暴行を加える。

それは無残にも2年間に及んだ。弁護士を通して離婚調停にかけられ2度目の夫と

離婚することができた和美は弁護士費用を返すために2年間、バイトを掛け持ちしながら働き詰めの質素な暮らしをする毎日だった。そして弁護士費用を返済し終えた 和美はその後 都会の生活に疲れ、再び地元に戻って来たのだった。



現在、和美は38歳になった。


あれから20年が経った今、和美の人生は全てが上手くいかず、ダメ男の甘い言葉に

騙され二度の結婚と二度の離婚を経験していた。

絶望しかなかった和美の脳裏に一瞬、亮介の顔が浮かぶ。気づけば、和美は亮介が

どんな暮らしをしているのかと思い、昔、亮介が暮らしていた自宅マンションを

訪れていた。


亮介は両親が暮らす部屋の隣に部屋を借りて結婚していた。

亮介は可愛い奥さんに見送られ、普通にスーツを着て、小学生の2人の子供達と

一緒に部屋から出てきた。マンションから出てくる亮介と子供達は幸せそうに笑っていた。

〈なんだ、ちゃんとパパしてるじゃん〉

和美は咄嗟に建物の影に身を潜め、高校の時に遊び人だった亮介の豹変ぶりに

驚いて出るに出れなくなった。


亮介はあの頃のことをリセットし、確実に前に進んでいた。


和美は自分だけ取り残された感覚に心がポカーンとなっていた。



あてもなく和美はフラフラと帰路についたのだったーーー。


その足音は小さく、次第に消えていったーーー。


〈なぜ、自分だけがこんな目に合うの?〉


〈なぜ、私だけが…こんな不幸なの?〉


和美の心は自暴自棄に陥る寸前まで落胆していた。


それは青空に白雲がポツポツと浮かぶ晴れた日のことだった。


和美の背中は寂しく影を落とし、只々 無力感だけが残っていた。







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