第28話 自立心

あれから十数年が経った今でも幸子は名前の通り幸せになっていた。

それは血は繋がってなくても、温かい家族に恵まれ、育てられた環境が

よかったのだろう……

もしも捨てられた場所が須崎神社じゃなかったら?


幸子の人生もまた変わっていたかもしれない……。



人の記憶は時間ときの流れと共に風化していく。


子は母を想い、母は子を想う。普通の家族はそうかもしれない。

だけど、捨てられた子はどうだろうかーー?

それでも母を想い続けるだろうか……。


幸子は意外とあっさりしていた。



幸子が母を恋しいと思ったのは小学校低学年の時までだった。


あの日、真実を知った日から幸子は一人で生きていく決心ができていたのだ。

……いや、それ以前から自立していたのかもしれない。


人は皆、自立心を持っている。


親に捨てられた幸子はその自立心が人より少しだけ芽生えるのが早かっただけだ。


子は親からどんどん離れ、一人でも成長し生きていけるのだ。

逆に重荷がなくて楽だと思っているかもしれない。


母親が思っている程、子はいつまでも母親に執着してはいない――ーー。






だけど、母親の方はどうだろうかーーーーー……。


幸子を捨てた母親はその後、どんな人生を歩んでいたのだろうか……。


本当に母親は幸せを掴むことができたのだろうか……。




もしかしたら、壮絶な波乱万丈の人生を送っていたかもしれないーーー。

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