第20話 発育
じいじが買ってくれたベビーベットも私の体が少しずつ大きくなるにつれて、
窮屈になってきた。
私の目は相変わらずぼやけて見えているが、「まー、まー」「ぱー、ぱー」と
一言、二言くらいは口から声が出ていた。
「さっちゃん、おばあちゃんのこと、ママだって(笑)」
「お父さんのことパパって言ってる(笑)」
「ええよ、なー、さっちゃんのママやもん」と私は温かい手に抱きしめられた。
苦しいくらいに むぎゅう と、してくる。
「俺もさっちゃんのオトンでええぞ」
「康夫もすっかりさっちゃんにデレデレして、まったく鼻の下伸びてるで」
「母さんもだろ」
「じゃ、私らもお姉ちゃんやな、音葉」
「うん。音も妹ができて嬉しいわ」
「なあ、ばあちゃんばっかりずるいよ。私もむぎゅうしたい」
「あ、音も」
「わかった、順番やで。ほれ、じいさんも並びんしゃい」
「わしはええ…」
そう言って、二郎は照れくさそうに一歩,後ろへ移動する。
「うっわあ、さっちゃんの肌、もちもちして気持ちええ」
「はよ、お姉ちゃん代わってよ」
「もうちっと待ち」
「お姉ちゃん、はよはよ」
「もう、わかったって!」
「ベビーベットもそろそろさっちゃんには小さくなったんやないかい、ばあさん」
「ほんまや…。少し大きくなっとう。じいさん、しっかりとさっちゃんの成長
みてるやんか」
「たまたま、目に入っただけや」
おっ、ナイス! じいじ、やっと気づいてくれたか、、、
その寝床は私にはもう小さいかな…足も伸びてきたみたいやし、
夜、寝てると足元がなんかスース―するんよな……。
「布団も小さくなったんかいな」
「音ちゃん、ちょっとさっちゃんをベビーベットに寝かせてくれるかい」
「え、今、抱っこしたとこなのに」
「ごめんなー」
「うん、わかった」
私の体は腕の中から離れ、またふかふかした場所に寝かされた。
小さな手に抱っこされると、落とされるんやないかってヒヤヒヤする。
何とか服にしがみついてたけど、無事に下りれてよかったわ。
どうやら私は
「ほんま、身長、伸びとるわ」
「赤ちゃんの成長は早いね…」
「よし、今夜からママと一緒にお布団で寝ようかの」
「おばあちゃん、自分でママだって言ってる(笑)」
「今だけや、言わせといたれ。そのうち大きくなったらクソババァって言われるで」
「なにぃ? わてがクソババァなら、じいさんはクソジジィやないか」
「もうおばあちゃんもおじいちゃんもケンカせんといてや。さっちゃんも
驚いた顔しとるやん」
そうそう。私も言い争う雑音は嫌いや。
なんでかわからんけど、その雑音が入ってくると頭の奥がズキズキする。
「…っていうか、私も音葉もクソジジィとかクソババァなんて言うたことないよ」
「2人ともおばあが育てたもんな。ええ子に育っとるよ」
「きっと、さっちゃんもええ子に育つよ」
ここはニッコリした方がええなあ。
そしたら、みんな笑うんやろうな、、、、、。
ちゃんと笑えとるやろか……
「あ、さっちゃんも笑っとるよ」
「ほんまや」
「めっちゃ、笑っとる」
上手く笑えとるみたいやな。
よかった……。
「なあ、おばあちゃん、さっちゃん笑っとるけんど、目 見えてるのかな」
それが、残念なことにまだ見えてないんよな……。
「はっきりとした視力ができてくるんは そうやなあ、まだ、まだ先やな。
今は多分、色彩がわかるくらいかな…」
「え、でも、音は見えてるよ。学校の健康診断、両目1.0やったもん」
「音ちゃんは今年、2年生やったな」
「うん…」
「まあ、音ちゃんくらいなら1.0見えたら上等さ」
「うん。なあ、さっちゃんの成長、楽しみやね」
「おばあは 勿論、三奈ちゃんや音ちゃんの成長も楽しみに
してるよ」
「ほな、おばあちゃんもおじちゃんも長生きせなあかんなあ……」
「ありがとなー(笑)」
へぇ、そうなんやね。
ふーん。視力が見えるよになるんは結構 時間がかかるんやな。
私もみんなの顔が見える日を楽しみにしているからねーーー。
―――ご対面は、その時まで、おあずけですね、、、、
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