第18話 生活リズム

例え捨てられた赤子だとしても、育てられた家によって人生が変わる。

育てられた家や周囲の人たちは私を優しく温かく包んでくれた。


須崎家の人々は私を一人の人間として迎えてくれた。


私はそれがとても、とても嬉しかったんだ。


あれからどのくらいの時間が経ったのだろう……。


時間の経過すらわからない。


私はずっと泣いていたーーー。


その度に、ミルクを飲まされ、オムツを替えられた。


周りが忙しそうに歩く足音と声が流れるように耳に入ってきた。

だけど、その声は嫌いな声ではなかった。

むしろ次第に、私の心にも馴染んできていた。


遠くで聞こえる音は何だかザワザワした賑わしい音だった。

まるで祭りのようだ。


目が開いているのか閉じているのかもわからない。


笑っているのか、どんな顔で泣いているのかもわからない。


ただ…大声を張り上げて目元から水泡が出ているのはわかる。


これは定期的にやってくる身体のリズムなんだろうか。


さっきいっぱいミルクを飲んだから今度は眠たくなってきた。


そろそろ眠るとしよう……



―――その繰り返しでまたやってくる私に刻まれた生活リズム。



「やっと、寝てくれたさ」

「ホッ…」

「赤ちゃんは泣くのが仕事ってホントだったんだね」

「音葉、三奈子、参拝客も増えてきたみたいだからそろそろ授与所に行ってくれ」

「はあーい」


2つの足音は段々と遠ざかって消えていった……




だけど、2日経っても1週間経っても私の目には何も映らなかったーーー。

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